Re Think : インダストリー4.0 ~飛躍に向けた課題とは?~

COVID-19以前から、インダストリー4.0の技術は、世界中の製造業の変革に大きな影響を与えていました。今では、IoT、AI、アナリティクス、自動化などのソリューションが、まったく新しい重要性を帯び、組織のデジタルトランスフォーメーションの推進を大きく加速させています。製造業におけるインダストリー4.0の発展は、今年のOpenText™ World Japan 2021の焦点にもなっています。 インダストリー4.0の成長 Qurate Researchによると、その市場規模は2018年の680億ドルから2025年には2050億ドルを超えると予測されており、多くの製造業がデジタル技術の採用を拡大させていることが明らかとなっています。 情報技術(IT)とオペレーション技術(OT)の進歩で、効率化とイノベーションを推進する環境が整ってきたことにより、テクノロジーは高度に自動化されたデジタルワークフローを提供し始めています。 パンデミックは、事実上すべての製造業者の業務環境を変化させました。マッキンゼーは、パンデミックから抜け出すためには、インダストリー4.0の採用が成功の鍵になると示唆しています。 COVID-19が大きく針を動かした マッキンゼーによると、デジタル化が進んでいるメーカーほど、危機に対応できる体制が整っていたとのことです。早期にサプライチェーンを回復させた企業を例にとると、業界リーダーの39%がインダストリー4.0のソリューションを導入し、サプライチェーンの可視化と柔軟性を獲得するためのコントロールタワーを構築していたことがわかりました。 しかし、ビジネスの回復力は、インダストリー4.0が果たした役割の一部に過ぎません。製造業がリモートワークを導入したスピードは驚くべきものでした。私たちは日々の業務とサプライチェーン全体で、これまで以上に自動化が進んでいることを目の当たりにしています。 デジタルトランスフォーメーションの加速 COVID-19は、私たちを新たな道に導いたのではなく、前進をさらに加速させました。数年前のデロイトの調査によると、調査対象となった製造業組織のうち、インダストリー4.0のような新たなビジネスモデルに対応するための準備が「非常に整っている」と評価したのはわずか20.7%に過ぎませんでした。 しかし、Manufacturing Leadership Council の最近の調査では、調査対象者の 45% がパンデミックに対応するためにはデジタル化が不可欠であると答え、さらに 53% がこれまでの経験から インダストリー4.0 の採用が加速すると予想しています。 具体化への多くの疑問…

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Ataru Takenouchi

January 14, 20211 minute read

COVID-19以前から、インダストリー4.0の技術は、世界中の製造業の変革に大きな影響を与えていました。今では、IoT、AI、アナリティクス、自動化などのソリューションが、まったく新しい重要性を帯び、組織のデジタルトランスフォーメーションの推進を大きく加速させています。製造業におけるインダストリー4.0の発展は、今年のOpenText™ World Japan 2021の焦点にもなっています。

インダストリー4.0の成長

Qurate Researchによると、その市場規模は2018年の680億ドルから2025年には2050億ドルを超えると予測されており、多くの製造業がデジタル技術の採用を拡大させていることが明らかとなっています。

情報技術(IT)とオペレーション技術(OT)の進歩で、効率化とイノベーションを推進する環境が整ってきたことにより、テクノロジーは高度に自動化されたデジタルワークフローを提供し始めています。

パンデミックは、事実上すべての製造業者の業務環境を変化させました。マッキンゼーは、パンデミックから抜け出すためには、インダストリー4.0の採用が成功の鍵になると示唆しています。

COVID-19が大きく針を動かした

マッキンゼーによると、デジタル化が進んでいるメーカーほど、危機に対応できる体制が整っていたとのことです。早期にサプライチェーンを回復させた企業を例にとると、業界リーダーの39%がインダストリー4.0のソリューションを導入し、サプライチェーンの可視化と柔軟性を獲得するためのコントロールタワーを構築していたことがわかりました。

しかし、ビジネスの回復力は、インダストリー4.0が果たした役割の一部に過ぎません。製造業がリモートワークを導入したスピードは驚くべきものでした。私たちは日々の業務とサプライチェーン全体で、これまで以上に自動化が進んでいることを目の当たりにしています。

デジタルトランスフォーメーションの加速

COVID-19は、私たちを新たな道に導いたのではなく、前進をさらに加速させました。数年前のデロイトの調査によると、調査対象となった製造業組織のうち、インダストリー4.0のような新たなビジネスモデルに対応するための準備が「非常に整っている」と評価したのはわずか20.7%に過ぎませんでした。

しかし、Manufacturing Leadership Council の最近の調査では、調査対象者の 45% がパンデミックに対応するためにはデジタル化が不可欠であると答え、さらに 53% がこれまでの経験から インダストリー4.0 の採用が加速すると予想しています。

具体化への多くの疑問

しかし、インダストリー4.0のソリューションを採用する企業にとっては、まだまだ長い道のりが待っています。現在のパンデミックは、これまでの答えと同じくらいの多くの疑問も投げかけています。

  • オペレーションとサプライチェーンのレジリエンスをどのように構築するのか?
  • 完全に自律的なサプライチェーンはすぐそこまで来ている?
  • 完全なリモートワークやハイブリッドワークへの準備に必要なことは?
  • 予算が縮小している中でイノベーションを維持するには?

OpenText World Japan 2021に参加してみませんか?

今年のオンライン OpenText World Japan 2021では、まさにこのような質問にお答えします。ご登録はこちらから

OpenText World Japan 2021開催概要】

  • 日時:2021年2月9(火)13時~14時30分
  • 会場:オンライン開催
  • 主催:オープンテキスト株式会社
  • イベントサポーター:一般社団法人CDO Club Japan他
  • 参加費:無料(事前登録制)
  • 公式ウェブサイト: https://resources.opentext.com/opentext-world-japan2021
  • お申込み方法:公式ウェブサイトより事前登録の上、ご参加ください。
  • ブレイクアウトセッションB:「環境変化へいかに対応するか?不測の事態にもビジネスを止めない強靭な調達ネットワークのあるべき姿とは」

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February 16, 2023 1 minute read

OpenTextが推進する企業市民活動 Zero-Inイニシアチブのご紹介

OpenTextが推進する企業市民活動 Zero-Inイニシアチブのご紹介

今は大きな変化の時ですが、さらに大きな変化を生み出す時でもあります。 OpenTextでは、2030 年に向けた大胆なアジェンダを設定し、その進捗状況を報告するとともに、より迅速な対応が必要な分野を明確に示しています。この報告書では、環境、社会、ガバナンスの目標達成に向けた私たちの昨年の取り組みについて詳しく説明しています。 OpenText Zero-In イニシアチブ – 2030年の誓い OpenTextは、新しい企業市民活動フレームワーク「The OpenText Zero-In イニシアチブ」で大胆な課題を設定し、OpenTextの未来と2030年までに達成する目標を定義しています。当社のZero-Inフレームワークは、ゼロフットプリント、ゼロバリア、ゼロコンプロマイズという3つの柱に基づいています。 カーボンフットプリントゼロ 気候変動は、私たちの時代における最大の課題です。その影響は短期的、長期的、そして実存的なものです。早急に対処しなければなりません。だからこそ、私たちの最初の柱は「ゼロ・フットプリント」でなければなりません。 これからの経済は、資源をシステムに戻し、再び利用する循環型経済です。私たちは、カーボンフットプリントを削減し、あらゆる方法でサステナビリティを推進し、お客様も同じようにサステナビリティを推進できるように取り組んでいます。 私たちのコミットメント ネットゼロ企業になるためには、製品、オペレーション、サプライチェーンにおいて、サステナビリティを組み込むサプライヤーを優先的に採用するなど、様々な削減機会を特定・実行し、よりエネルギー効率の高いプロジェクトを実行するために、組織全体で協力していきます。 当社の情報管理ソリューションは、サステナビリティに対するお客様のニーズの高まりに対応するものです。当社の最優先課題は、お客様のクラウド化、環境イノベーターとしてのお客様の環境目標達成の支援、紙からデジタルへの移行を促進することなどがあります。 ゼロフットプリントへの道のりはそう容易いものではありません。しかし、データと行動を通じて地球に対する説明責任を果たすための重要なステップを踏み出したことを誇りに思います。 障壁をゼロにする あらゆる背景を持つ人々が公平・平等に扱われる社会を希求します。OpenText のすべての声は、耳を傾けられ、尊重されます。多様性はイノベーションの要件であり、多様な組織がより強力なチームを構築します。そうすることで、私たちの社会の根底にある社会的不公正を最終的に打破することができるのです。仕事をつくることで、人生が変わる。 だからこそ、私たちは「ゼロ・バリア」の職場環境を構築していきます。私たちは、採用・雇用維持のための新たな戦略と、包括的な企業文化の継続的な発展を通じて、これを実現します。 私たちのコミットメント OpenTextは、社会的地位の低いグループに開発機会を提供することで、会社だけでなく、私たちが生活し働くコミュニティにも公平性、多様性、包括性をもたらすことができます。私たちは、先住民や黒人の学生インターンシッププログラム、インドでの女性のためのエンジニアリングインターンシップの機会、南アフリカでの重要なスキルトレーニングなどを確立しています。…

January 17, 2023 1 minute read

製造業のグローバル化を飛躍させるためのSCM強化

製造業のグローバル化を飛躍させるためのSCM強化

製造業に深刻な被害をもたらしました新型コロナウイルス。サプライチェーンが寸断し調達品の入手が困難な状況が続きました。ものづくりの担い手にこれから求められるのは、さまざまな困難や変化に耐えられる、柔軟性と強靭さを兼ね備えた「レジリエント」な製造業です。そのためには、サプライチェーンDXの実現が欠かせません。 本ブログでは、2022年9月29日に開催された日経クロステック主催オンラインセミナー「Technology Foresight 2022 ~ポスト・コロナを見据えた製造業の進路を描く~」より、ものづくり企業のDX戦略策定についてのサマリーをお届けします。 サプライチェーンDXの取り組みについてのホワイトペーパーや導入事例はこちらをご覧ください。https://digital-tech-insight.jp/opentext/resources/?sol=bn コロナ禍を経験して見えてきたグローバル調達の真髄 前半のセッションでは、調達・購買業務コンサルタントとして数多くのグローバル企業のSCM改革を支援する未来調達研究所の坂口氏と、日経BP総合研究所で製造業の情報化を専門とする木村氏による対談が行われました。グローバル調達における、地政学のリスクやエシカル調達の徹底など複雑な要因が絡み合い、不確実性が高まる傾向にある中で、各メーカーはどのような取り組みが必要となるのかの解説が行われました。 グローバル分散と国内回帰、そしてフレンドショアへ グローバルサプライチェーンは年代ごとに変化が見られ、もともと多くの企業が国内で製造していましたが、90年代からは安価な労働力を模索してアジア地域での『オフショア』が進みました。しかし、その後は地政学や新たな疫病流行などにより『ニアショア』に切り替える企業が登場し、さらに2000年代には経済保障を考慮し『国内回帰』が加速しました。特にコロナ禍においては、リモートワーク関連商品や医療品などのニーズが高まり、近場で確実に製造できることが重視されました。 これらは単なるリスク分散でしたが、近年は人権やSDGsといった価値観によるサプライチェーンが構築されるようになり、『フレンドショア』を進める企業が登場しました。フレンドショアとは「特定のイデオロギーを持つ国とは距離を置く」あるいは「自由主義圏や民主主義圏にもう一つのカードを持ち、分散する」という考え方です。実際に、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアからの調達を停止した企業は少なくありませんでした。 「見える化」により、付加価値の高いモノづくりへ 単に“モノを売る”ことから脱却し、付加価値の高い商品を生み出すための「見える化」をすべきです。例えば、2001年のITバブル崩壊以降、日本企業の抱える在庫額は増加し続けてきました。昨今の半導体不足の影響を受けてようやく緩やかになりましたが、21年間伸び続けた原因は、自社の在庫額や収益について、経年での「見える化」ができていない企業が多いためだと考えられます。また、サプライチェーンのリスクマネジメント観点からも「見える化」は必須です。旧来は地震や津波などの自然災害を想定したリスクマネジメントが行われてきましたが、昨今は地政学、原材料価格の高騰、法改正など、リスクも多様化しています。あらゆるリスクに備え“いざ”という時に早急に対策できるよう、Tier2以降のサプライヤーについても「どのようなサプライヤーと取引しているのか」「どこから調達しているのか」といった点を透明にしておく必要があります。それらがリアルタイムで見えるようになっていれば、「これから何が起きそうなのか」「必要な在庫がどこにあるのか」を把握し、状況に応じて必要な判断や最適な解決策が見出せるはずです。 そして「見える化」を進めるために必要なのは、デジタル人材の育成」と「デジタルを恐れずに使う組織風土作り」です。今は便利なツールがたくさんあるので、ツールを一から開発する必要はありません。それらのツールを活用できるデジタル人材を育成することが必要不可欠ですが、日本ではデジタル人材の育成が十分に進んでいません。その背景にあるのは「自分の業務はデジタルを使わなくても業務改善できる」と思ってしまうことではないでしょうか。しかし、Amazonが経費削減のためにサーバーを内製したことがAWS誕生のきっかけとなったように、“自分の担当業務だけの改善”に留めず、「自分の取り組みが企業の柱になるかもしれない」という意識を持ち取り組むことで、付加価値の高いサービスが生まれる可能性があります。 DXは決してゴールではありません。その先のCX(Corporate Transformation)、IX(Industry Transformation)へとステップを進めていくためにも、デジタル人材を育成し、デジタルツールを果敢に使い、付加価値のあるモノ、サービスの実現に挑戦していくことが求められていますと締めくくりました。 強靭なサプライチェーン実現に向けたグローバル物流可視化 そして後半のセッションでは、OpenText秋谷と日経BP総合研究所の木村氏による対談が行われました。グローバルビジネスを展開する製造企業において、サプライチェーンリスクマネジメントはいまや経営戦略上の重要な議題の一つとして、サイバー攻撃や自然災害、地域紛争によるサプライチェーンの寸断リスクが高まる中で、ロジスティクスの高度化を見据えたグローバル物流可視化についてのベストプラクティスをご紹介しました。 サプライチェーンコントロールタワーの構築により不測の事態を軽減・回避する プロダクトライフサイクルの短期化が年々顕著になっており、メーカーにとってみると在庫リスクは高まる一方です。需要予測に基づき、調達~生産~販売を計画的に行い、在庫も欠品も最小限に留めたいところですが、サプライチェーンがスムーズに回り続けるとは限りません。新型コロナウイルス感染拡大によるロックアウト、それによるサプライヤーからの部品供給停止、スエズ運河のコンテナ船座礁事故やサプライヤーを経由したサイバー攻撃など、サプライチェーンを寸断させる理由は多様化しており、サプライチェーンマネジメントは企業に取って大きな課題です。 このような不測の事態が起きている中では、可視性と俊敏性を持ったサプライチェーンコントロールタワーの構築が不可欠となっています。例えば、国を跨いで配送に数週間~数カ月を要するグローバル物流においては、トラック・船舶・鉄道とさまざまな輸送手段があり、輸送手段ごとに異なる物流キャリアが介在しているため、メールや電話・FAXでトラッキングするのは困難です。しかし、物流キャリアが提供している情報連携システムを活用して荷物の配送ステータスを企業間で自動連携できれば、「到着予定日に対して予定通り来ているか」「破損・水濡れなどの損傷が発生していないか」といった情報をリアルタイムに知ることができます。さらに社内外のデータと組み合わせて活用できれば、「このままでは予定通りに配送されない」といった予兆を読み取り、在庫を保有する他のサプライヤーを即時に探し出し、早急に在庫を確保するといった対応も可能になるでしょう。 サプライチェーンコントロールタワーというと高度な仕組みに感じられるかもしれませんが、複雑なロジックを組んで自動化することを、最初から目標にする必要はありません。まずは必要な物流の可視性を確保し、判断の精度を高めていくということが重要です。 見える化に失敗する企業の特長とは サプライチェーン情報を「見える化」するためのシステムを導入したが、うまくいかない企業の多くの原因は、「見られるデータがもともと社内にない」あるいは「データはあるがリアルタイムに収集・利用ができない」ことです。可視化するためのシステムを導入するという判断は間違っていないのですが、そもそもデータを取得していなかったり、取得していても個別に管理されていて一部の担当者しか利用できない状況になっていたりすると、導入したツールにデータが供給されません。…

October 24, 2022 1 minute read

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