手動による処理は時間がかかり、非効率的でミスが生まれやすくなります。現代のデジタル化され、つながった世界では、これはもはや持続可能ではありません。B2B(企業間)統合は、ビジネス文書をサプライヤーや顧客と電子的に交換する方法として始まりました。これにより時間と費用が節約され、提供できるサービスのレベルが向上しました。最新のB2B統合ソリューションは、取引パートナー同士で効率的に作業やコラボレーションを行うためのエコシステムの基盤を提供すべく進化を遂げています。
B2B統合とは、簡単に言うと「社外にまでまたがる主要なビジネスプロセスをデジタル的に統合、自動化、最適化すること」です。B2B統合は実質的に、顧客、サプライヤー、その他の取引パートナーと協力する上で、あらゆる側面を改善するためのテクノロジーアーキテクチャーを提供します。
B2B統合の主な利点は、デジタル取引を実行するコスト、スピード、生産性が向上すること以上に、コラボレーティブな関係を構築し、現代のサプライチェーンを促進する全く新しい方法で仕事が進めるようになることにあります。
例えば、昨今の自動車メーカーは、通常自社の車両の部品の生産のうち、最大85%をサプライヤーに頼っています。さらに、自動車がよりコネクテッドなものになるにつれて、自動車メーカーが生み出すパートナーシップの種類は変化しています。中国では自動車メーカー、大学、研究所を始めとする計98の企業・組織が、同国のインテリジェントコネクテッドビークル業界を発展させ、新技術を大量生産に生かすことを主眼に戦略的提携に参加しています。
これらの新しいビジネスプロセスを支援するには、サプライチェーンエコシステムに関わるすべての関係者間で、デジタル情報を迅速かつ安全に共有できるB2B統合プラットフォームが必要です。実際にIDC Manufacturing Insightsの調査によると、2020年までに60%以上の企業が「エコシステムと体験への投資を強化し、自社の売上高の30%以上を支える」デジタルプラットフォームに依存するようになると予測しています。
B2B統合の種類
B2B統合には2種類あります。
データレベルでの統合: これは紙からデジタル文書への移行プロセスで、取引パートナー間における文書交換の自動化を伴います。電子データ交換(EDI)は、この種類のB2B統合の第一世代といえるでしょう。
人レベルでの統合: これにより、取引パートナー間の効果的なコミュニケーションとコラボレーションが可能になり、エンドツーエンドのビジネスプロセスを実行できます。また、取引パートナーのオンボーディングやコミュニティ管理などの機能が含まれます。
最良のB2B統合プラットフォームは、両種類の統合に対処するための幅広い機能を提供します。
B2B統合とEDIとの違いは何か
EDIシステムは、請求書、発注書、出荷通知などの重要なビジネス文書を取引パートナーと交換するプロセスを自動化・簡略化します。初期のEDI B2B統合ソリューションは、マニュアルのプロセスを自動化された方法に置き換えることに焦点を当てていました。
組織が電子的に取引を開始すると、コラボレーション機能とコミュニティ管理機能を同じB2B統合ソリューションに導入することで、ビジネスプロセスをさらに強化できることが明らかになりました。EDIは依然としてB2B統合テクノロジーの基盤となっていますが、その他にも次のような追加機能の実現が期待されています。
電子データ交換
B2B統合への第一歩は、紙の文書をリアルタイムでのデジタルファイルの交換に置き換える「発注書、請求書、出荷通知などの重要なビジネス文書の自動化」です。
グローバルパートナーとの協業と管理
現代のあらゆるB2B統合ソリューションの鍵は、包括的なコミュニティ管理です。これには、ビジネス情報を安全かつ効果的に共有し共同作業を行うために、顧客、サプライヤー、物流業者、金融機関などの取引パートナーとの接続を自動化するためのツールが含まれます。これは迅速なパートナーオンボーディングから始まり、新製品開発、サプライチェーン管理、マーケティング、販売に至るまで業務のあらゆる部分に関わっています。
ビジネスプロセス管理
ビジネスプロセス管理では、請求書に記載されている納入数量と受け取った商品または出荷通知の照合など、主要なビジネスプロセスを推進するデータの品質を向上させるためのルールとプロフィールの使用が必要です。これにより、取引パートナーとの間のエンドツーエンドのプロセスを自動化して効率と生産性を向上させることができます。
エンタープライズアプリケーションの統合
最良のB2Bソリューションにより、データをビジネスシステムから顧客やサプライヤーに直接送ることができます。例えば、SAP B2B統合では、選択したERPデータをネットワーク経由で送ることができます。B2B統合プラットフォームは、自動的にデータを取引パートナーのエンタープライズアプリケーションが受け入れることのできる形式に変換します。さらに、選択したプラットフォームはバックエンドシステム間を通過する際の「検疫」として機能できるはずです。重要なB2B統合のベストプラクティスの1つに、データ品質をチェックして例外が発生した場合にすぐに警告するビジネスルールを確立できることが挙げられます。
事業活動のモニタリング
この機能はB2B統合オペレーションのリアルタイムでのステータスを監視し、一定期間におけるシステムのパフォーマンスを報告するアプリケーションを通常オンラインで配信して提供します。リアルタイムのアラートにより、プロセスの内訳をすばやく特定して対処することができます。また、B2Bの統合パターンと傾向が、システムのパフォーマンスを向上させることを示す報告結果にもなります。
高度な分析
通常B2B取引においてエンドツーエンドの完全な見える化を確保できるのは、ネットワークを通過するときのみです。B2B統合ツールは、他のツールでは取り込むのが困難な大量の有益なビジネス情報にアクセスできます。これは企業の様々な部門の実績を把握する上で、貴重なリソースになります。最近のB2B統合プラットフォームは、人工知能やAI支援分析などの機械学習を含む高度な分析をソリューションに組み込んで、意思決定の改善や、取引パートナーとの連携強化に生かすことができます。
B2B統合の利点とは何か
他社との連携はあらゆる企業にとって不可欠であり、B2B統合はこれらの対外関係のデジタルトランスフォーメーションの表れです。完全に統合されたエンドツーエンドのB2B統合ソリューションは、以前は不可能だった多くのことを含め、次のような様々な利点をもたらします。
マニュアル処理にかかる時間とコストの削減
ビジネス文書の処理に伴うミスの削減
受注から回収まで、調達から支払いまでの主要プロセスを自動化することによる経営効率の向上
サプライチェーンの自動化による生産性の向上と在庫の削減
サプライチェーン内のすべての活動と取引の見える化の確保
取引パートナーコミュニティ内のコラボレーションの強化
取引パートナーの業績管理の改善
取引パートナーとのより緊密な関係を通じたイノベーションの促進
すべてのB2Bデータを管理下に置いて見える化し、意思決定を改善するための実用的な知見を提供
B2B統合の課題は何か
B2B統合を実装する際の主な課題は、「全取引パートナーとの協業」です。電子的につながる取引パートナーが多いほど経営はより効率的になり、より多くの利益をもたらすでしょう。 しかし従来のビジネスモデルでは、企業は80%の収益を生み出す20%の取引パートナーを重要視していました。経営のデジタル化が進むにつれて80/20ルールはますます不適合になり、組織はすべての取引パートナーと密接に連携する方法を見つけなければなりません。
これは以下のような理由から、B2B統合にとって難題といえます。
交換するビジネス文書の種類が膨大にある
ANSI、EDIFACT、XMLなど、多数のB2B/EDI規格があり、それらを多数の取引パートナーとの取引においてサポートする必要がある
各取引パートナーは、B2B/EDI規格を異なる方法で解釈する可能性が高い
サポートする通信プロトコルが多種多様である
小規模の取引パートナーは、大規模なB2B統合ソリューションを実装するための予算、社内資源、ビジネス要件を欠く場合がある
小規模の取引パートナーは、仕事のやり方を変えることに対して抵抗を示すことがある
取引パートナーのオンボーディングは時間と手間がかかることがあり、業務の効率に影響を与えるバックログとなり得る
B2B統合ソリューションの成熟度について
B2B統合ソフトウェアとソリューションは、しばらく前から利用されています。 実際に、2005年には早くもYankee Groupが、フォーチュン500企業の90%以上がB2B統合および取引コミュニティの活動に関わっていたと推定していました。2013年にStanford BusinessとOpenTextが行った調査によると、全世界の回答者の半数が、年間100万ドル以上をB2B統合テクノロジーに投資していることが明らかになりました。そのうち7%近くの企業は年間B2B予算が2000万ドルを超えています。B2BとB2C取引の境界が曖昧になっていることを組織が理解するにつれて、その額は急増しています。また、B2B企業の80%がB2Cでの経験によって消費者マインドが変化したと考えています。
ただしSCM WorldとOpenText™の調査によると、企業内で実際に展開されているB2B統合ソリューションの成熟度合いに関しては、 まだまだこれからといえます。
SCM Worldは、B2B統合の成熟に向けた5段階のステップを開発しました。
トランザクショナル: この段階では手動の技術を使用して、サイロ化された受動的なプロセスを戦術的に実行します。
インフォーマティブ: 次の段階では主要な取引パートナーが根幹的な経営プロセスに関与しますが、デジタルでの可視性は限定的です。
アナリティカル: デジタルに接続された需要と供給データの集約と分析を通じて、サプライチェーン全体にわたってコラボレーティブな知見を得ることが可能になります。
リレーショナル: レスポンシブなB2B統合ネットワークは複数層の需要・供給ネットワークにわたって、ほとんどの取引パートナーとの統合とコラボレーションを可能にします。
ジェネレーティブ: 最終段階では、収益性の高い成長サイクルがエンドツーエンドのバリューチェーン全体にわたって、エンドツーエンドのデジタル統合によって推進されます。
調査対象のグローバル企業におけるB2B統合の平均成熟度は、5点満点中2.8点でした。これはほとんどの企業がまだ分析段階にあり、取引パートナーコミュニティを適切にデジタル化できていないことを示しています。さらに憂慮すべき点は、14%の企業が自社のB2B統合機能を2点未満と評価し、成熟の最終段階に達したと答えたのは2%だけだったことです。
B2B統合の今後
SCM WorldはB2B統合が成熟段階に達する上での葛藤について、「サプライチェーンの管理が、拡大したバリューチェーンの編成へと進化した」ことが原因であると結論付けました。複数層の需要・供給ネットワークにまたがってシステムとプロセスを接続する機能により、莫大な価値を引き出すことができます。しかし、それは容易なことではありません。
これらのビジネスニーズに応えて、B2B統合ソフトウェアとソリューションは3つの方法で開発されています。
B2B統合サービスの開発
単純にデータ交換するだけの時代は過ぎ去り、現在企業では取引パートナーとの関係を最大限に活用できるように様々なB2B統合サービスを必要としています。これには、高度なアイデンティティ、アクセス、情報管理機能を必要とするコミュニティ管理などの分野が含まれ、取引パートナーが文書、システム、プロセスで直接共同作業をすることが可能になります。
B2B統合プラットフォームは取引パートナーとの関係のみならず、取引パートナーのシステム、さらにはそのネットワークに接続されているものとの関係を管理するサービスを提供できなければなりません。例えば、卸売業者は自社の製品が最適な環境条件下で輸送されるように、物流業者のトラックに接続されているIoTデバイスへのアクセスを要求する場合があります。
B2Bマネージドサービスへの移行
グローバルサプライチェーンの複雑さと多様性が増すにつれて、B2B統合ソリューションを管理するためのコストと複雑さも増します。特にグローバルにビジネスを拡大している企業にとって、B2B機能を社内で管理することは急速に困難になる可能性があります。 あらゆるデータフォーマットと取引パートナーの通信プロトコルの要件を満たすことに加えて、常に最新のB2B統合テクノロジーを使用し、世界各国のあらゆる規制と業界標準への準拠を保証するにはコストがかかり、またリソースを消費します。ますます多くの企業が信頼できるサードパーティと協力して、自社のB2B統合要件を満たすアウトソーシングモデルに移行しています。IDCは「デジタルトランスフォーメーションがサプライチェーンを牽引する」という調査で、66%の組織が万全を期してB2Bマネージドサービスの導入を検討していることを明らかにしました。多くの経営幹部はB2Bマネージドサービスを、デジタルトランスフォーメーションプログラムの他分野に貴重な経営資源を解放するための手段だと考えています。
ハイブリッド統合の進化
クラウドの導入で頻繁に発生するデジタルトランスフォーメーションの主要な障害の1つに、クラウドとオンプレミスのアプリケーションの統合が挙げられます。この課題を克服するためにハイブリッド統合が開発されました。これまで統合のプロセスは、B2B統合、アプリケーション間(A2A)統合、管理ファイル転送(MFT)、抽出、転送、ロード(ETL)など、さまざまな分野に分けられていました。ハイブリッド統合は、OpenText Liaisonの最先端のALLOYプラットフォームを含むこれらの様々な統合の種類を、1つのエンタープライズ規模の統合プラットフォームにまとめます。ハイブリッド統合プラットフォーム市場は急速に成長しており、2022年までに2017年の2倍以上となる336億ドルに達すると見込まれています。
B2B統合にOpenTextを選ぶべき理由
OpenTextは、B2B統合とB2Bマネージドサービスの世界的なリーダーとして認められています。毎日60万社以上の取引パートナーが迅速かつ安全にビジネス文書を交換するために、当社のB2B統合プラットフォームを利用しています。このプラットフォームは毎年240億以上の取引を処理しており、これは世界の商取引のうち8兆ドルを占めています。現在OpenText Business Networkは、ガートナーが選出するサプライチェーン部門の上位25社のうち23社によって利用されています。この実績をもとに、業界で以下のような評価を得ています。
● フォレスター・リサーチは2017年から2018年までのB2BビジネスネットワークのリーダーとしてOpenTextを選出
● 2018年、IDCはOpenTextを「ワールドワイド・マルチエンタープライズ・サプライチェーンコマースネットワーク」市場のリーダーとして選出
● 2018年、ガートナーはOpenTextをマルチエンタープライズ・サプライチェーンネットワーク事業を遂行できる上位5社に選出
● 2017年、オーバムはOpenTextをB2B統合マネージドサービスのリーダーに選出
(当ブログは2019年1月23日に米国で発表されたブログ記事「What is B2B Integration?」の抄訳です)
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