SAPデータアーカイブを活用して移行規模を縮小し、不要なシステムを廃止する

SAP S/4HANA移行におけるデータアーカイブとレガシーアプリケーション廃止の重要性を解説。移行データを削減してコストやリスクを抑えながら、将来のAI活用に向けて信頼性の高い情報基盤を整備する方法を紹介します。

SAP S/4HANAに移行するデータが1テラバイト増えるごとに、移行コストやテストに要する時間が増え、移行後に長期間管理しなければならないデータも増加します。

ある世界的な自動車メーカーでは、RISE with SAPへの移行対象として30テラバイトのデータを抱えていました。しかし、そのうち16テラバイト、つまり半分以上をアーカイブすることで、クラウド移行を妨げていたコスト面の課題を解消しました。

SAP S/4HANAへの移行を始める際には、まず「何を移行せずに残すのか」を決めることが重要です。

このシリーズの第1回では、「どのデータをSAP S/4HANAに移行し、どのレガシーアプリケーションを廃止すべきか」という問いを取り上げました。今回は、その答えとなるSAPデータアーカイブとアプリケーションの廃止について詳しく見ていきます。

SAPデータアーカイブは、どのように移行リスクを軽減するのか

SAPデータアーカイブでは、日常的に利用する情報と、利用頻度は低いものの保持しておく必要がある情報を分離します。

アクティブなデータはSAP S/4HANAに移行し、非アクティブなデータは管理されたアーカイブに保存します。アーカイブされたデータも検索可能な状態を維持し、ビジネス上のコンテキストとの関連性を保つことができます。

これにより、SAP S/4HANAへの移行対象を最新のデータに絞りながら、過去の情報についても監査や検索、意思決定などに引き続き利用できます。

OpenText™ Core Archive for SAP® Solutionsは、こうしたアプローチを支援するソリューションであり、30年以上にわたるSAPとOpenTextの協業を基盤としています。

アプリケーションの廃止によって、レガシー環境を残さない

アーカイブによって解決できるのは、主にデータの問題です。もう一つ考えなければならないのが、レガシーアプリケーションです。

過去の情報を参照するためだけに残されているアプリケーションであっても、稼働を続ける限り、コストやシステムの複雑性、ガバナンス上のリスクは残ります。

こうした問題を解消するために必要なのが、レガシーアプリケーションの廃止です。アプリケーションを適切に廃止しなければ、新しい環境への移行後も、旧システムが並行して存在し続けることになります。

そのためには、次の4つのステップが重要です。

1. 移行前にアプリケーションを棚卸しする

どのアプリケーションを引き続き稼働させる必要があるのか、どのアプリケーションが過去情報の参照だけに使われているのか、そしてどのアプリケーションを廃止できるのかを特定します。

2. 保持すべき情報を明確にする

ビジネス、法務、ガバナンスの各責任者と連携し、どの情報を保持する必要があるのかを決定します。そのうえで、アプリケーションを廃止する前に、情報の保持・削除に関するルールを設定します。

3. ビジネスコンテキストを維持したままアーカイブする

保持する情報は、ビジネス上のコンテキストを維持しながら、適切にガバナンスされたアーカイブ環境へ移行します。

4. アプリケーションを完全に廃止する

必要な情報が安全に保存されていることを確認したら、不要になったアプリケーションを停止し、完全に廃止します。

これら4つのステップは、SAP S/4HANA稼働後の「後片付け」としてではなく、ERPモダナイゼーション計画の一部として進めることが重要です。RISE with SAPを利用して移行する組織にとっても、データのアーカイブとアプリケーションの廃止を、あらかじめ移行計画に組み込んでおく必要があります。

段階的なERP移行で業務への影響を抑える

ERPを段階的に移行することで、移行スケジュールを維持しながら、業務への影響を抑えることができます。

SAPを利用している組織の78%が、移行期間中の業務への混乱を最小限に抑えることを重要な要件として挙げています。

そのため、財務や調達など、価値の高い機能から移行を始め、全面展開する前に1つの地域や事業部門でパイロットを実施する方法が有効です。

また、それぞれの移行段階でデータをアーカイブすることで、次の段階へ持ち込むデータ量を削減でき、移行スケジュールを維持しやすくなります。

アーカイブするデータは、将来のAI活用にどう影響するのか

AIは急速にSAPの領域にも広がっています。

SAPinsiderによると、SAPを利用している組織の3分の2にあたる66%が、コアビジネスシステムで生成AI機能を利用できることを、移行と変革における必須条件としています。

将来、AIがどのような情報を活用できるかは、ERP移行の際にどの情報をどのような形で残すかによっても左右されます。

例えば、レガシーシステムのデータを低コストのストレージに単純にエクスポートした場合、記録そのものは残せても、そのデータが持っていたビジネス上のコンテキストが失われる可能性があります。

一方、レガシーシステムをそのまま稼働させ続ければ、十分に管理されていない旧システム環境が残り続けることになります。

これに対し、ビジネス上のコンテキストとともに情報をアーカイブすれば、信頼でき、検索可能な情報として保持できます。こうした情報こそ、将来AIが活用できる状態で残しておくべきものです。

Gartner®も、AIへの投資について同様の考え方を示しています。

「AIの取り組みで成果を上げている組織は、AIによる成果が低い組織と比較して、データ品質、ガバナンス、AI対応人材、チェンジマネジメントといった基礎的な領域に最大4倍投資しています。」

SAP環境においても、「何をアーカイブし、どのアプリケーションを廃止するのか」を決めることは、データ品質とガバナンスを整備する取り組みの一部といえます。

保持する情報を決める際には、ガバナンスの責任者も意思決定に参加させることが重要です。それによって、情報の信頼性を確保し、ビジネス上のコンテキストを維持するとともに、将来のAI活用に適した形で情報を管理できるようになります。

より小さく、よりクリーンなSAP S/4HANA移行へ

SAP S/4HANAへの移行規模を小さくし、よりクリーンな環境を構築できるかどうかは、企業自身の選択にかかっています。

ベストプラクティスガイド『Cloud ERP Modernization with Confidence』では、CIO、エンタープライズアーキテクト、ガバナンスの責任者が取るべきアクションを紹介しています。

このシリーズの第3回では、SAPを利用する企業のリーダーが、SAP S/4HANAへの移行についてどのように考えているのかを紹介します。

OpenText Japan

OpenText™ は、AIの時代に企業がデータを安全に管理し、正しく活用できるように支援する、情報管理ソリューションのグローバルリーダーです。私たちの技術は、データに意味や背景(コンテキスト)を加えることで価値ある情報へと変え、AI の学習に必要なナレッジベースを作り出します。詳しくは www.opentext.com をご覧ください。