AI活用の成否を分けるのはAIではない ― ITSM導入企業の調査から見えた“自律型IT運用”への第一歩
ITSM導入企業への調査から、AI活用の成果を左右するのはAIそのものではなく、運用プロセスや情報基盤であることが明らかに。自律型IT運用への第一歩と成功の条件を解説します。

生成AIの進化により、多くの企業がITサービスマネジメント(ITSM)へのAI活用を進めています。サービスデスクの問い合わせ対応やインシデント分析、ナレッジ検索の自動化など、AIがもたらす可能性はますます広がっています。
では、実際にAIを導入した企業はどの程度の成果を得ているのでしょうか。
Foundry CIOによる調査では、ITSMおよびESM(Enterprise Service Management)領域でAIを導入または検証している企業の90%が、すでに何らかのROIを実感していると回答しています。また、91%が投資対効果を確認している一方で、「大きなROIを得ている」と回答した企業は26%にとどまっています。つまり、多くの企業がAIの価値を感じている一方で、その成果には大きな差が生じていることが分かります。
同じAIを導入していても、なぜ企業によって成果に違いが生まれるのでしょうか。
AI導入の障壁はAIそのものではない
調査では、AI活用を進めるうえでの主な課題として以下が挙げられています。
- AIで利用するデータの品質
- AIに関する知識やスキル不足
- ROIの不透明さ
特に注目したいのが、最も大きな障壁として挙げられている「データ品質」です。
AIは大量のデータを分析し、推論や回答を生成します。しかし、もとになるデータの品質が低ければ、AIの判断精度も期待どおりにはなりません。
これはITSMにおいても同様です。過去のインシデント履歴、変更管理情報、ナレッジベース、構成情報などが十分に整備されていなければ、AIは適切な回答や推奨を提示することが難しくなります。
AI導入だけを先行させても期待した成果につながらない理由は、ここにあります。
AIの価値を決めるのは「運用データ」
AI活用の議論では、大規模言語モデルやエージェント型AIなどの技術に注目が集まりがちです。
しかし、IT運用の現場で重要なのは、AIそのものよりもAIが参照する運用データです。
例えば、
- 構成情報は最新の状態に保たれているか
- インシデント情報が適切に記録されているか
- ナレッジが蓄積・共有されているか
- サービス間の依存関係が把握できているか
こうした情報が整備されて初めて、AIは正確な分析や適切な提案を行うことができます。
調査でも、高い成果を実現している企業ほど、データ品質の向上に取り組んでいることが示されています。
AI時代のITSMに求められる運用基盤
AIを活用したサービスマネジメントを実現するためには、AIツールを導入するだけでは十分ではありません。重要なのは、AIが信頼できるデータにアクセスできる環境を整備することです。
例えば、
- IT資産やサービス構成を把握するDiscovery
- 構成情報を統合管理するCMDB
- システム全体の状況を可視化するObservability
- 業務プロセスを支えるService Management
といった運用基盤は、AI活用の土台となります。
AIはこうした基盤の上で初めて価値を発揮します。
将来的に自律型運用(Autonomous Operations)を目指す場合でも、その前提となるのは正確で信頼できる運用データです。
AI活用を成功に導く3つのポイント
調査結果から見えてくる成功企業の共通点は、AIそのものよりもAIを活用できる環境づくりに投資していることです。
1. 信頼できるデータを整備する
AIの判断品質はデータ品質に大きく左右されます。構成情報やナレッジ、運用データの整備は最優先事項です。
2. ナレッジを組織資産として蓄積する
インシデント対応履歴や運用ノウハウを継続的に蓄積し、再利用できる状態にすることが重要です。
3. AIを活用できる人材を育成する
調査では、従業員のスキル向上も成功要因として挙げられています。AIは人を置き換えるためのものではなく、人の能力を拡張するためのものです。
AIの価値を引き出す運用基盤とは
AIによるサービスマネジメントの高度化を実現するためには、AIツールの導入だけでなく、その判断を支える信頼性の高い運用データ基盤が欠かせません。
OpenTextは、IT運用の可視化からサービス管理までを包括的に支援するソリューションを提供しています。
例えば、
- システムやIT資産を自動的に把握する OpenText Universal Discovery
- 構成情報を統合管理する OpenText Universal CMDB
- システム全体の状態を可視化する OpenText Observability
- AIを活用したサービスデスクや業務プロセスを支援する OpenText Service Management
を組み合わせることで、AIが活用できる信頼性の高いデータ基盤の構築を支援します。
AI投資のROIを高めるためには、AIそのものだけではなく、その土台となるデータと運用基盤の整備が重要です。
サービスマネジメントの高度化や自律型IT運用の実現を目指す企業は、まず運用データの整備状況を見直すことから始めてみてはいかがでしょうか。
詳しくは以下をご覧ください。
OpenText Observability & Service Management
まとめ
AI活用はすでにITSMの世界でも本格的な段階に入りつつあります。しかし、同じAIを導入していても、企業によって成果には大きな差があります。
Foundry CIOの調査では、AIを活用する企業の91%がROIを実感している一方で、大きな成果を得ている企業は26%にとどまっています。調査から見えてくるのは、成功の鍵がAIそのものではなく、データ品質や人材育成、運用基盤の整備にあるという点です。
AIを活用したサービスマネジメントや、その先にある自律型IT運用を実現するためには、まずAIが信頼できるデータを利用できる環境を整える必要があります。
AI活用の成否を分けるのは、AIそのものではありません。
その土台となるデータ、プロセス、そして運用基盤こそが、これからのIT運用の競争力を左右する重要な要素になるのではないでしょうか。
【参考情報】
- AI時代に「障害対応型IT運用」は限界を迎えている ―IT運用は自律型運用へ進化する
- Foundry CIOによる調査レポート(英語);The state of AI adoption in ITSM and ESM, 2026




