IBMはいかにしてAIとコンテンツ管理でグローバルHRを変革したのか

私たちのグローバル顧客であるIBM社は、あらゆる活動の中心に「人」を据えています。世界数十カ国で28万人以上の従業員を抱えるIBM社にとって、シームレスで信頼性の高い人事(HR)エクスペリエンスの提供は、単なる業務上の優先事項ではありません。従業員一人ひとりを支えるうえで欠かせない重要な要素です。
数年前、IBM社は従業員による人事関連文書やサービスへのアクセス方法が、もはや従業員の期待に応えられなくなっていることに気づきました。給与明細や在職証明書の取得といった比較的簡単な手続きであっても、完了までに数日から数週間を要することがありました。当時の業務プロセスは手作業に依存しており、時間がかかるだけでなく、地域によって対応品質にも差がありました。
AIやデジタルイノベーションをリードする企業として、IBM社は「より良い仕組みを構築できるし、そうすべきだ」と考えていました。
IBM社が求めていたのは、単なる業務の自動化ではありません。AIが人事情報へ安全かつ責任を持ってアクセスし、大規模に活用できる基盤が必要でした。そして、その基盤上で一貫性のある人間中心のエクスペリエンスを提供することが求められていました。
その実現において重要な役割を果たしたのが、OpenTextです。
AI活用を支えるHRコンテンツ基盤の構築
IBM社が最も重視したのは「信頼」でした。
従業員は、自身が必要とする人事関連文書が安全かつ正確に管理され、厳格なアクセス制御のもとで保護されていることを信頼できなければなりません。
そこでIBM社は、世界各地のHRシステムに散在していた数百万件の文書を一元管理するため、OpenText Content Management for SAP SuccessFactorsを導入しました。
コンテンツ管理を人事ワークフローに直接統合したことで、従業員がどこで勤務していても、関連文書の生成、保存、取得をSAP上で自動的に行えるようになりました。
このコンテンツ基盤は、IBM社のAI戦略全体を支える重要な土台にもなっています。AIが安全かつ効果的に機能するためには、情報が適切に整理・管理され、必要なときに確実にアクセスできる状態になっていなければなりません。
すべての従業員に統一された対話型エクスペリエンスを提供
信頼できるコンテンツ基盤を整備した後、私たちは従業員エクスペリエンスの向上に取り組みました。
目指したのは、音楽を再生したり天気を確認したりするのと同じような感覚で、人事関連情報を取得できる環境です。複数のシステムを操作したり、必要な文書を探したりする必要はありません。シンプルで直感的な対話だけで必要な情報へアクセスできることを理想としました。
その実現に向けて、OpenText Content AviatorとIBM watsonxを活用したデジタルアシスタント「AskHR」を統合しました。これにより、従業員は必要な情報を自然な対話形式で問い合わせ、数分以内に取得できるようになりました。
この仕組みでは、
- AskHRが従業員との対話を担当
- OpenText Content Aviatorが必要な文書を検索・取得
- SAP SuccessFactorsがシステム・オブ・レコード(記録管理システム)として機能
という役割を担っています。
その裏側では、AIがこれらのシステムをシームレスかつ安全に連携させています。そのため、従業員は複雑な処理を意識することなく利用できます。
実際に利用してみると、在職証明書は2分もかからず発行できました。以前は数週間かかっていたことを考えると、大きな変化です。このような体験こそ、AIとコンテンツ管理が密接に連携することで生まれる価値を実感できる瞬間だと感じます。
イノベーションを支えるガバナンス
スピードは重要です。しかし、それ以上に重要なのが「信頼」です。
IBM社では、導入するすべてのソリューションについて、厳格なガバナンスと検証プロセスを実施しています。適切な権限や役割を持たない従業員は、そもそもデータへアクセスできません。
このレベルの統制は決して妥協できない要件であり、大規模な組織でAIを活用するための基盤となっています。
OpenText Professional Servicesとの緊密な連携により、メタデータモデルやデータ取り込みプロセス、グローバル設定の設計・運用に至るまで、高い品質基準を維持することができました。
現在、次のような規模で運用が行われています。
- 20万件以上のオンデマンドHRレター
- 31言語への対応
- 数百万件の従業員関連文書を管理
- 年間1,100万件の利用実績
これは単なるAIではありません。適切なガードレールを備え、明確なガバナンスのもとで運用される、目的志向のAIです。
エンタープライズ規模で実証された成果
その成果は数字にも明確に表れています。
- HR文書の処理速度が99%向上
- 問い合わせの自己解決率94%を実現
- HR運営コストを40%削減
- 管理職98%、経営幹部97%が利用
価値のあるテクノロジーは、自然に組織へ浸透していきます。
次世代HRを実現するAIエコシステム
現在IBMは、「AskHR」「OpenText Content Aviator」「SAP Joule」の3つのAIエージェントを単一の対話型インターフェース上で連携させることで、より高度なHRエクスペリエンスの実現を目指しています。
例えば、給与明細を請求した際に、書類を受け取るだけでなく、前月からの変更点をAIが自動的に解説してくれるような体験です。
また、福利厚生について質問すると、システムが関連規定を参照し、必要なデータを分析したうえで最適な回答を提示することも可能になります。
これこそが、私たちが目指す未来のHRです。
私たちの目標はシンプルです。すべてのIBM社の社員が必要な情報へ迅速かつ安全にアクセスできる環境を提供すること。そしてAIによって業務の生産性を高めながら、より人間らしい働き方を実現することです。
パートナーシップが支える未来
IBM社ほどの規模を持つ企業でHR変革を実現するには、コンテンツ管理、AI、ガバナンス、そして従業員エクスペリエンスに関する高度な専門知識が不可欠です。
OpenTextは、基盤アーキテクチャの構築からグローバル展開、さらに継続的なイノベーションの推進に至るまで、この変革を支える重要なパートナーとなっています。
私たちは今、AIとコンテンツ管理の融合がもたらす可能性を共に実証しています。
仕事の未来は、対話型であり、インテリジェントであり、そしてセキュアです。その出発点となるのが、信頼できるコンテンツ基盤なのです。




