製造業において、予測不可能な環境変化に対応するためには、様々な困難や変化に耐えられる、柔軟性と強靭さを兼ね備えた「レジリエント」なサプライチェーンの実現が必要不可欠です。そして、持続可能な社会を実現するために、まず取り組まなければならないのが、GX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)です。製造業の今後の発展は、この二つの戦略にかかっているといっても過言ではありません。本ブログでは2023年5月30日に開催された日経クロステック主催のオンラインセミナー「製造DX Update ~レジリエンス、グリーン、デジタルで描く持続可能な製造業のGX/DX戦略~」より、「増大するリスクに負けないサプライチェーンの強靭化」をテーマに、「現実解を提示!サプライチェーン可視化とリスク対策~高度化に向けた4つのステップ~」と題した弊社シニアソリューションコンサルタント山本惟司と、日経BP総合研究所上席研究員木村知史様による対談から、弊社のご紹介内容をサマリーします。
現実解を提示!サプライチェーン可視化とリスク対策~高度化に向けた4つのステップ~
多様化に伴う需要の不透明さに加え、米中対立をはじめとする地政学リスクや二酸化炭素排出量などの環境リスク、コンプライアンス準拠を前提とせざるを得ない人権リスクなど、サプライチェーンにおいて安定的な調達を妨げる要因は様々です。これらリスクに打ち勝つために、不可欠なサプライチェーンの高度化に向けて、製造業が行うべき取り組みを4つのステップで解説を行いました。
リスク解決に不可欠なデータ活用による高度化
企業のサプライチェーンに危機を及ぼす要因は様々です。製造企業の物流担当者は供給遅延、サプライチェーンの断絶、物流の遅延などに頭を悩ませているのではないでしょうか。このようなリスクに打ち勝つためには、データを有効活用したサプライチェーンの高度化・強靭化が必要不可欠です。
OpenTextでは、サプライチェーンの高度化・強靭化を行うステップを、次の4段階に定義しています。
【ステップ1】サプライチェーンデジタル化 | ✓ 電話・メール・FAXのマニュアル作業削減 ✓ 紙ベースのプロセス撤廃 ✓ エンドツーエンドの100%デジタル化 |
【ステップ2】サプライチェーンDX | ✓ 社内・社外エコシステム全体の可視化 ✓ 業務横断、業務プロセス改革 ✓ 局所的ではない全体最適化 |
【ステップ3】サプライチェーンレジリエンス エシカルサプライチェーン | ✓ 分析に基づく例外リスク検知 ✓ 次の一手を打つ俊敏性 ✓ サプライチェーンコントロールタワー、予測 |
【ステップ4】アダプティブサプライチェーン | ✓ 必要に応じたサプライチェーン再構築 ✓ サプライチェーンネットワーク修正 ✓ 経営ROI向上 |
高度化の第一歩となる「サプライチェーンデジタル化」では、これまで、電話・メール・FAX等で実施されていたマニュアル作業を削減し、エンドツーエンドのプロセスすべてにおける100%デジタル化を実現します。
ステップ2の「サプライチェーンDX」では、局所的な個別最適ではなく、自社を取り巻く社内外のエコシステムにおける全体最適を目指し、サプライチェーンに関わる業務データを単一基盤で集約して可視化し、デジタルデータを様々な意思決定に活用できるようにします。
その先は、「サプライチェーンレジリエンス」や「エシカルサプライチェーン」といった具体的なテーマに基づいて、過去のデータから将来を予測し行動につなげるステップを経て、最終的には構築された自社を取りまくサプライチェーンエコシステム全体に対して、KPIを設定・評価し、必要に応じてサプライチェーンネットワークを修正し再構築する「アダプティブサプライチェーン」の実現へと段階を進めていきます。
これらの取り組みについては、必ずしも正解の形があるわけではありません。しかし、様々な要因を踏まえたIT的な打ち手としては、多角的にサプライチェーン全体をリアルタイムにモニタリングをしながら、過去・現在を分析して将来を予測するサプライチェーンコントロールタワーの構築が必要不可欠でしょう。
コントロールタワー構築に不可欠な、社内外とのデータ連携
では企業はサプライチェーンコントロールタワーをどのように構築すればよいのか?サプライチェーンコントロールタワーと聞くと、多くの方がAIによる可視化や自動化をイメージすると思いますが、それらを実現するためにはデータを用います。
近年、生産(Production)・販売(Sales)・在庫(Inventory)を同時に計画し、全体最適を進める「PSI計画」を検討される企業様が増えています。自社製品の売れ行きを予測し、確実に調達~生産~在庫を用意するには、自社を取り巻く社内外の環境から、鮮度・精度の高いデータを集め、それに基づいた判断を行わなければなりません。
実際、ERPに格納されているデータの40%以上は社外からのデータだと言われます。グローバルの統計では、サプライヤーのうち外部企業から「データを統合してほしい」とリクエストを受けている割合は全体の71%にもおよび、今後も増加し続けると考えられています。
つまり、コントロールタワーを構築するには、まずは社内外のデータを取り込み、自社の様々な計画と紐付けを行う必要がありますが、実際にはどのように内外のデータ統合を進めるのかというと、調達部門が行うサプライヤーとの情報連携の進化/深化については、次の4段階に分類できます。
レベル | 目的 | 管理/可視化/分析の対象 |
【レベル1】 調達業務プロセスのデジタル化 | 調達業務プロセス(P2P/O2C)のデジタル化(EDI/Web EDIの導入/刷新) | ✓ 業務プロセス遂行状況の可視化 ✓ サプライヤパフォーマンスの分析 |
【レベル2】 調達計画情報の共有 | 調達計画に関わる情報連携の追加 | ✓ サプライチェーン計画管理/可視化 |
【レベル3】 サプライチェーン計画情報の連携 | サプライヤに関わる情報連携の追加(在庫情報/生産リードタイム/調達情報など) | ✓ PSI情報管理/可視化 |
【レベル4】 サプライチェーン計画情報連携の高度化/詳細化 | さらに上流のサプライヤーとの情報連携 | ✓ PSI情報管理/可視化(精緻化) |
レベル1の「調達業務プロセスのデジタル化」では、業務プロセスは変えずに、これまでFAXやメールで行っていた受発注業務や既存のEDIの環境老朽化にともなう刷新を行います。次にレベル2の「調達計画情報の共有」では、事前に所要計画や内示情報を送り、注文までの所要時間についてあらかじめ確認できるようになります。レベル3の「サプライチェーン計画情報の連携」では、在庫情報や生産リードタイムといった付加価値的な情報をサプライヤーから取得してPSI管理や可視化を実現します。さらに、レベル4の「サプライチェーン計画情報連携の高度化/詳細化」になると、Tier1、Tier2…とさらに上流のサプライヤーからも情報が連携されるため、PSIをより精緻化していくことができます。
レベル3以降は、様々なサプライヤーに協力を仰ぐことになるため、それぞれの企業の運用方法に柔軟に対応しながら情報連携するという点も重要なポイントです。
データ連携とリスク緩和を実現するソリューション
各社との情報連携を行うためにOpenTextではどのような支援をされているのかというと、社内外のエコシステムを連携するための仕組みとして、企業間(B2B)とアプリケーション間(A2A)統合を実現する「OpenText™ Trading Grid™」というプラットフォームを提供しています。企業は OpenText のネットワークに一度接続するだけで、社内外のヒト、システム、モノといった、あらゆる取引先・データソースとの迅速・安心・柔軟な接続が可能になります。
また、新たにサプライチェーンのリスクを監視・管理するサプライチェーンリスク管理ソリューションとして「OpenText™ Active Risk Monitor」をリリースしました。「OpenText™ Active Risk Monitor」は、ダッシュボードを介してサプライヤーンの財務情報や、ESG指標にアクセスできるだけでなく、有害メディアへの書き込みによる風評リスクや、制裁リスクのあるサプライヤーのリアルタイムモニタリング等も提供します。これにより、管理者は適切なリスク軽減プロセスを実行でき、代替サプライヤーをオンボーディングすることも可能です。
OpenTextは、デジタル化と先進のテクノロジーによる様々なソリューションを通じて、めまぐるしい環境変化にも対応できる組織としての強靭さと意思決定のスピードを、世界中のお客様に提供しています。
OpenTextが提供するソリューションには、サプライチェーンの高度化において先進的な取り組みを行っている欧米企業に対して提供して来た様々な機能やノウハウがサービスの中に組み込まれていますので、これからサプライチェーンの高度化に向けて取り組む企業にとっては非常に便利な機能があらかじめ含まれています。また、インボイス制度など日本独自の標準や規制にも対応しているため、安心してお使いいただけます。
ぜひ、サプライチェーンにおけるレジリエンスを高めるためにご活用くださいと締めくくりました。
オープンテキストではサプライチェーン領域における最新ソリューションのセミナーを開催しています。
ご興味のある方はお気軽にご参加ください。
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