福井県の北部に位置し、観光の町としても知られる坂井市。同市は防災情報発信のツールとして防災行政メールや防災アプリを活用してきましたが、スマートフォンを持たない高齢者世帯への情報伝達が課題となっていました。そこで、音声一斉配信サービスのOpenText voiceREACHを導入し、固定電話に避難情報を伝える取り組みを開始。要配慮者利用施設への連絡にも活用し、年に1回実施している避難訓練に役立てています。
台風、地震などの災害時の避難情報を固定電話に音声で一斉配信
人口約8万8,000人(2025年2月時点)を擁する坂井市は、福井県第2の都市です。行政区域は東西約31kmと長く、西は日本海に面し、東は勝山市、北はあわら市と石川県加賀市に接しています。国の天然記念物および名勝に指定されている「東尋坊」や、海の神様の島として崇められた「雄島」、国の史跡・重要文化財に認定されている古城「丸岡城」などが全国的に知られ、多くの観光客が訪れています。
同市は地震や津波、風水害などの災害対策に力を入れており、市全体で年1回の防災訓練、小学校区単位では年に3回程度の地区訓練を行っています。また、市民の防災意識を高めるため、地区や団体向けの防災講座も実施しています。坂井市 危機管理対策課 主任の宮永英之氏は「住民の『自助』と『共助』の活動によって速やかに災害に対応できる防災力向上に努め、安心して暮らせる地域づくりを目指しています」と語ります。
同市ではこれまで「命を守る、防災情報を伝えるツール」として防災行政無線のほか、有事に備えて事前登録された携帯電話やパソコンのメールアドレスに情報を配信する防災行政メール、Jアラート(全国瞬時警報システム)、市内にある携帯電話とスマートファンに一斉に情報を配信する緊急速報メール(エリアメール)、防災アプリ、坂井チャンネル(ケーブルテレビ)、公式ホームページ/SNS(Facebook、LINE)を活用して防災情報を周知してきました。2024年には災害時の行動や避難に関する情報をまとめた冊子『坂井市防災ガイドブック』を作成して全戸に配布しています。
数ある防災情報発信の中で、近年主流になりつつあるのが防災アプリです。台風や大雨などで発令される避難指示、防災行政無線の放送内容、地震の震度情報、災害情報、熊などの危険生物出没情報といった防災情報や防犯情報、避難所の開設などの情報を市民にプッシュ通知しており、現在の登録率は全市民の9%に達しています。
しかし当時は、防災行政メール、ホームページなどを見るには住民が携帯電話、スマートフォン、パソコンを持ち、インターネット環境がなければ利用できません。また、スマートフォンやパソコンを持たない高齢者世帯への連絡が課題となっていたため、情報が十分に行き渡らない懸念がありました。そこで同市が着目したのが、避難指示などの発令時に、固定電話に避難情報を音声で配信する仕組みでした。
従量課金で利用できるOpenText voiceREACHを採用
坂井市は、他の自治体の先行事例を参考にOpenText voiceREACHを採用しました。OpenText voiceREACHは音声メッセージを固定電話や携帯電話に一斉送信するサービスで、音声ファイルと配信先リストをWebにアップロードするだけで、大量の宛先に音声メッセージを送信できます。あらかじめ配信先リストを登録しておけば、送信の指示を出すことも容易です。また、新たな音声メッセージを追加する際には電話機から録音できる点も特長です。
「採用の決め手は、導入/運用コストが抑えられることでした。クラウド型のサービスであるため、システムなどの初期導入コストが低く、使った分だけの従量課金で利用できます」(宮永氏)
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