製造業のグローバル化を飛躍させるためのSCM強化

製造業に深刻な被害をもたらしました新型コロナウイル…

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Ataru Takenouchi

10月 24, 20221分で読めます

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製造業に深刻な被害をもたらしました新型コロナウイルス。サプライチェーンが寸断し調達品の入手が困難な状況が続きました。ものづくりの担い手にこれから求められるのは、さまざまな困難や変化に耐えられる、柔軟性と強靭さを兼ね備えた「レジリエント」な製造業です。そのためには、サプライチェーンDXの実現が欠かせません。

本ブログでは、2022年9月29日に開催された日経クロステック主催オンラインセミナー「Technology Foresight 2022 ~ポスト・コロナを見据えた製造業の進路を描く~」より、ものづくり企業のDX戦略策定についてのサマリーをお届けします。

サプライチェーンDXの取り組みについてのホワイトペーパーや導入事例はこちらをご覧ください。
https://digital-tech-insight.jp/opentext/resources/?sol=bn

コロナ禍を経験して見えてきたグローバル調達の真髄

前半のセッションでは、調達・購買業務コンサルタントとして数多くのグローバル企業のSCM改革を支援する未来調達研究所の坂口氏と、日経BP総合研究所で製造業の情報化を専門とする木村氏による対談が行われました。グローバル調達における、地政学のリスクやエシカル調達の徹底など複雑な要因が絡み合い、不確実性が高まる傾向にある中で、各メーカーはどのような取り組みが必要となるのかの解説が行われました。

グローバル分散と国内回帰、そしてフレンドショアへ

グローバルサプライチェーンは年代ごとに変化が見られ、もともと多くの企業が国内で製造していましたが、90年代からは安価な労働力を模索してアジア地域での『オフショア』が進みました。しかし、その後は地政学や新たな疫病流行などにより『ニアショア』に切り替える企業が登場し、さらに2000年代には経済保障を考慮し『国内回帰』が加速しました。特にコロナ禍においては、リモートワーク関連商品や医療品などのニーズが高まり、近場で確実に製造できることが重視されました。

これらは単なるリスク分散でしたが、近年は人権やSDGsといった価値観によるサプライチェーンが構築されるようになり、『フレンドショア』を進める企業が登場しました。フレンドショアとは「特定のイデオロギーを持つ国とは距離を置く」あるいは「自由主義圏や民主主義圏にもう一つのカードを持ち、分散する」という考え方です。実際に、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアからの調達を停止した企業は少なくありませんでした。

「見える化」により、付加価値の高いモノづくりへ

単に“モノを売る”ことから脱却し、付加価値の高い商品を生み出すための「見える化」をすべきです。
例えば、2001年のITバブル崩壊以降、日本企業の抱える在庫額は増加し続けてきました。昨今の半導体不足の影響を受けてようやく緩やかになりましたが、21年間伸び続けた原因は、自社の在庫額や収益について、経年での「見える化」ができていない企業が多いためだと考えられます。
また、サプライチェーンのリスクマネジメント観点からも「見える化」は必須です。
旧来は地震や津波などの自然災害を想定したリスクマネジメントが行われてきましたが、昨今は地政学、原材料価格の高騰、法改正など、リスクも多様化しています。あらゆるリスクに備え“いざ”という時に早急に対策できるよう、Tier2以降のサプライヤーについても「どのようなサプライヤーと取引しているのか」「どこから調達しているのか」といった点を透明にしておく必要があります。
それらがリアルタイムで見えるようになっていれば、「これから何が起きそうなのか」「必要な在庫がどこにあるのか」を把握し、状況に応じて必要な判断や最適な解決策が見出せるはずです。

そして「見える化」を進めるために必要なのは、デジタル人材の育成」と「デジタルを恐れずに使う組織風土作り」です。
今は便利なツールがたくさんあるので、ツールを一から開発する必要はありません。それらのツールを活用できるデジタル人材を育成することが必要不可欠ですが、日本ではデジタル人材の育成が十分に進んでいません。その背景にあるのは「自分の業務はデジタルを使わなくても業務改善できる」と思ってしまうことではないでしょうか。しかし、Amazonが経費削減のためにサーバーを内製したことがAWS誕生のきっかけとなったように、“自分の担当業務だけの改善”に留めず、「自分の取り組みが企業の柱になるかもしれない」という意識を持ち取り組むことで、付加価値の高いサービスが生まれる可能性があります。

DXは決してゴールではありません。その先のCX(Corporate Transformation)、IX(Industry Transformation)へとステップを進めていくためにも、デジタル人材を育成し、デジタルツールを果敢に使い、付加価値のあるモノ、サービスの実現に挑戦していくことが求められていますと締めくくりました。

強靭なサプライチェーン実現に向けたグローバル物流可視化

そして後半のセッションでは、OpenText秋谷と日経BP総合研究所の木村氏による対談が行われました。グローバルビジネスを展開する製造企業において、サプライチェーンリスクマネジメントはいまや経営戦略上の重要な議題の一つとして、サイバー攻撃や自然災害、地域紛争によるサプライチェーンの寸断リスクが高まる中で、ロジスティクスの高度化を見据えたグローバル物流可視化についてのベストプラクティスをご紹介しました。

サプライチェーンコントロールタワーの構築により不測の事態を軽減・回避する

プロダクトライフサイクルの短期化が年々顕著になっており、メーカーにとってみると在庫リスクは高まる一方です。需要予測に基づき、調達~生産~販売を計画的に行い、在庫も欠品も最小限に留めたいところですが、サプライチェーンがスムーズに回り続けるとは限りません。新型コロナウイルス感染拡大によるロックアウト、それによるサプライヤーからの部品供給停止、スエズ運河のコンテナ船座礁事故やサプライヤーを経由したサイバー攻撃など、サプライチェーンを寸断させる理由は多様化しており、サプライチェーンマネジメントは企業に取って大きな課題です。

このような不測の事態が起きている中では、可視性と俊敏性を持ったサプライチェーンコントロールタワーの構築が不可欠となっています。
例えば、国を跨いで配送に数週間~数カ月を要するグローバル物流においては、トラック・船舶・鉄道とさまざまな輸送手段があり、輸送手段ごとに異なる物流キャリアが介在しているため、メールや電話・FAXでトラッキングするのは困難です。しかし、物流キャリアが提供している情報連携システムを活用して荷物の配送ステータスを企業間で自動連携できれば、「到着予定日に対して予定通り来ているか」「破損・水濡れなどの損傷が発生していないか」といった情報をリアルタイムに知ることができます。さらに社内外のデータと組み合わせて活用できれば、「このままでは予定通りに配送されない」といった予兆を読み取り、在庫を保有する他のサプライヤーを即時に探し出し、早急に在庫を確保するといった対応も可能になるでしょう。

サプライチェーンコントロールタワーというと高度な仕組みに感じられるかもしれませんが、複雑なロジックを組んで自動化することを、最初から目標にする必要はありません。まずは必要な物流の可視性を確保し、判断の精度を高めていくということが重要です。

見える化に失敗する企業の特長とは

サプライチェーン情報を「見える化」するためのシステムを導入したが、うまくいかない企業の多くの原因は、「見られるデータがもともと社内にない」あるいは「データはあるがリアルタイムに収集・利用ができない」ことです。可視化するためのシステムを導入するという判断は間違っていないのですが、そもそもデータを取得していなかったり、取得していても個別に管理されていて一部の担当者しか利用できない状況になっていたりすると、導入したツールにデータが供給されません。

また、データ連携元となる取引先のサプライヤーやパートナー企業に、データ入力や自社様式のデータのダウンロードなどの個別対応を求めてしまうケースも要注意です。データをインポートするための負担が高いと作業に時間がかかってしまい、情報の鮮度が失われたり、多忙を極める取引先の場合は入力対応ができなかったりすることがあります。

このような状況を回避するために最初にすべきことは、「外部サプライチェーンシステムからのデータ連携強化」と「一元管理への着手」です。まずは標準フォーマットを適用してデータを収集し、社内で広く活用できる状態に基盤が整備できたら、アプリケーションを活用して「収集したデータを、分かりやすくダッシュボードに表示させる」「例外対応が必要なものをフィルタリングする」「後続処理を自動化する」といったステップから始めることでリスクを低減することができます。

急激な需給変動や調達ルートの変更にも、柔軟に対応

では実際に「見える化」による効果についてお話すると、ルクセンブルグにある世界最大級の鉄鋼メーカーアルセロール・ミッタル社では、2020年、新型コロナウイルスの影響を受けて、操業機能の停止に追い込まれました。ロックダウンに伴うサイトクローズや工場閉鎖、急激な需要低下、船便減少、それ等の理由に伴う注文キャンセルや予定注文の見合わせといった混乱が続きました。さらに2021年に入ると今度は急激な需要回復が起き、オーダーが殺到し、それに追いつかない物流確保に追われました。

しかし同社は数年前からEnd to Endでの可視化をテーマに掲げ「OpenText Business Network Cloud」を導入し、物流の可視化に取り組んでいたため、資材の所在や到着予定日の把握はもちろん、急激な需要変動への対応業務も自動化されており、これらの事態を乗り切ることができました。

さらに今年に入るとロシアによるウクライナ侵攻を受けて、ロシアからの資材調達を停止する判断を会社が行ったため、ロシアサプライヤーとの取引停止とそれに伴う新たな調達ルート確保とサプライチェーン再編をしなければなりませんでしたが、新たなサプライヤーや物流パートナーとの取引が緊急で始まった際にもスムーズに接続・連携することができました。同社では今後はさらに可視化された情報を分析することで、改善すべきプロセスの抽出を行いサプライチェーン全体のプロセス改善に繋げようとしています。

世界で85%以上の空運・海運企業が選んだシステムとは?

OpenTextはあらゆるデータへのアクセスを可能にする次世代サプライチェーンプラットフォームをご提供しています。全世界35,000社の顧客、110万の企業がOpenTextのBusiness Networkに日々接続し 、全世界の電子商取引の10%に相当する年間330億件のトランザクションが実行されています。
国内外でやりとりされるB2B/EDIデータを交換・統合し、取引および各業務データのライフサイクル全体を管理できる「OpenText Business Network Cloud」は、グローバル物流可視化において、業種業界を問わず世界最大規模のB2Bネットワークを運営し、物流業界においては空運、海運企業の85%以上に当たる600社以上のお客様が利用しパートナー企業を含めると1600社を超え、世界の3PL業者の過半数が接続しています。

“物流”と“ロジスティクス”という言葉は混同されがちですが、本来、ロジスティクスとは軍事用語で部隊の移動や前線への軍事物資や食料などの調達や供給を支援するシステムを指します。サプライチェーンにおいても限られた企業の資産をどのように配置するか考え、維持し、最適化できるよう、OpenText Business Network Cloudがお客様のサプライチェーンDXをお手伝いしますと締めくくりました。

サプライチェーンDXの取り組みについてのホワイトペーパーや導入事例はこちらをご覧ください。
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