サプライチェーン内でトラブルが起こると、サプライチェーン全体の動きが止まり、大きな損害が発生する恐れがあります。
そのため、強靭なサプライチェーンの構築には、徹底したリスク管理のもと損害を抑える仕組みや能力を備えることが重要です。本記事では、サプライチェーンが抱えるリスクやリスク管理について解説します。
サプライチェーンとは
サプライチェーンとは、商品や製品が消費者のもとに届くまでの全体の流れを指した言葉です。
例えば、製造業では原材料の調達から始まり、商品や製品の製造、物流、販売を通して、消費者やそれを利用する企業のもとに届きます。
この一連の流れ全体がサプライチェーンであり、各工程でさまざまな企業が受発注や入出荷など「モノ、お金、情報」の取引が行なわれているのが特徴です。
さらに昨今は業際化や国際化により、取引先企業が多様化しています。経由するサプライチェーンも複雑化することで、サプライチェーンの管理がより一層重要視されています。
サプライチェーンにおけるリスク
ここでは、サプライチェーンの構築や運用をするなかで発生する3つのリスクについて解説します。
調達リスク
サプライチェーンは、各工程が適切に稼働することで成り立っています。どこか一つの工程が止まると、サプライチェーン全体が機能しなくなるのです。
そのため、原材料や完成品を正しく届けられなくなる「調達リスク」が大きな問題となっています。
例えば、原材料の調達が滞ると、部品や商品の製造ができず、物流や販売といったその後の工程に進めません。そのため、大きな損害が発生する可能性があります。
また、自然災害によって工場が生産停止に追い込まれたり、パンデミックや地政学的な問題により海外で製造した部品や材料を輸入できないことも調達リスクに挙げられます。
特に日本ではかねてから巨大地震の可能性が指摘されているため、リスクに備えた事前の施策が大切です。
環境リスク
製品の製造や輸送など、各工程で環境へ悪影響を与えてしまうことも、サプライチェーンが抱えるリスクといえます。
近年世界中でESG経営が求められ、サステナブルへの取り組みが注目されています。「CO2削減」「脱炭素化」が推進されていくなかで、サプライチェーンにおいても環境に配慮した取り組みが行なわれています。
具体例としては、環境に配慮したサービスや商品を消費者へ提供する、サプライチェーンによって排出されるCO2量の算定をして削減する、などといった取り組みです。
しかし、サプライチェーンは複数の企業で成り立っているため、一つの企業が環境に配慮した事業をしても、サプライチェーンに関わる企業全体で取り組まなければ、CO2や有害物質の排出量の増加や資源の乱用などを食い止めることは難しいと言わざるを得ません。
現状、日本においては2050年までにCO2排出量をゼロにする、いわゆるカーボンニュートラルを政府が宣言したことにより、より一層環境に配慮した取り組みが求められ、企業側もそれに追従する動きを見せています。
人権リスク
グローバルなサプライチェーンには、人権や倫理的なリスクが存在します。例えば、サプライチェーンの川上ともいえる原材料の調達では、紛争鉱物やや強制労働などにより生産が行われている国や地域がある場合です。
紛争地域の国と直接取引をすると、原材料の輸入などに支払ったお金が反政府勢力や武装勢力などに利用される可能性があります。
さらに、取引をしている企業は紛争とは関係ない国にあっても、調達先が紛争地域の国であると結果的に紛争に関与してしまうリスクがあるのです。
また、製品を安く提供するためには、原材料などの調達価格を抑えなければいけません。そのため、取引先の企業では従業員への過酷な労働や労働搾取、児童の強制労働といった人権を無視した労働が行なわれることがあります。
自社の利益を優先するあまり、無理のある条件を取引先に押し付けることで、過酷な労働環境を作ってしまうリスクがあるのです。また、企業として、社会的制裁を強いられるリスクもあります。
サプライチェーンのリスク管理にはサプライチェーンコントロールタワーが重要
ここでは、サプライチェーンのリスク管理のかなめとなるサプライチェーンコントロールタワーについて解説します。
サプライチェーンコントロールタワーとは
サプライチェーンコントロールタワーとは、サプライチェーンを横断する、調達、製造、在庫、物流といったすべての情報やデータを集約し、そのデータを可視化し、例外を迅速に検知するサプライチェーンの管制塔のことです。
原材料や部品の生産状況からモノが発送された際の輸送状況、各サプライヤーからの納品物の欠品率や納期遅延率まで、あらゆる工程の情報をリアルタイムで共有します。
さらに、サプライチェーン業務においてもAI(人工知能)などを活用した、日常的な業務の自動化や異変や例外の素早い検知などにより、業務の効率化とリスク管理を行っていくうえでも必要となる情報から洞察を得ることが可能となり、次の一手を迅速に打つことが可能になります
また、サプライチェーンコントロールタワーの仕組みや需要については、下記のリンク先の記事で詳しく紹介しています。サプライチェーンコントロールタワーについての知識を深めるためにも、ぜひ本記事と併せてチェックしてください。
サプライチェーンコントロールタワーとは?仕組みや世界規模での需要について解説
コントロールタワーを使うことでリスク管理ができる
サプライチェーンは想定外のトラブルが発生する可能性があり、万全に備えておくことが難しいため、安定的な調達、および製造を行っていくには、日々のリスク管理が重要になります。
そのため、サプライチェーンコントロールタワーにより各工程の情報を可視化し、異変や問題の発生を事前に検知、あるいは問題が発生した場合でも迅速に対応して損害を最低限に抑えるためのリスク管理が必要です。
経済産業省が公表する「令和3年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(グローバル・サプライチェーンの可視化に関する調査)」によれば、グローバルで優良なサプライチェーンを構築している企業の大半はコントロールタワーを整備し、エンドツーエンドで可視化を実現している企業も全体の50%まで増えています。
しかし、日本企業に絞るとコントロールタワーを整備している企業は少なく、エンドツーエンドまで可視化できている企業は16%しかありません。 そのため、グローバルでビジネスを展開している日本企業は、特にコントロールタワーの構築と可視化により国際競争力を高めていくことが求められています。
まとめ
サプライチェーンの運用には3つのリスクがあり、さまざまなトラブルが起こる可能性があります。そこで、サプライチェーンマネジメントを通して、自社のサプライチェーンのリスク管理を進めていく必要があるのです。
一方で、企業のサプライチェーンマネジメントは複雑化し、適切な情報管理ができていない企業も増えています。
そのため、サプライチェーンを可視化し、現在の状況を把握することでリスクに備えられるサプライチェーンコントロールタワーの必要性が増しているのです。
サプライチェーンコントロールタワーを通してサプライチェーン内の脆弱性を見つけ出し、徹底したリスク管理体制を実現することが、企業が勝ち残っていくためには必要だといえるでしょう。
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