ある調査会社では、「セルフサービスBI」をこのように定義しています。『セルフサービスBIは、エンドユーザーが、自身のためのレポート作成やデータ分析を、承認され、サポートされたアーキテクチャとツールの枠内で、設計し、実行することと定義できます。』
ここにきて、なぜ、エンドユーザーが自分自身で分析を行わなければならないのでしょう?20年以上、この業界にいますが、BIツールを導入したが、うまく活用されなかったという失敗談を時折耳にしました。理由は、操作が難しい、データが古い、自分が本当に欲しいデータや集計方法が無い、といったこと、また、パフォーマンスの問題も以前は、いや、現在もあるかも知れません。
3年前にオープンテキストは老舗のBIベンダーであるアクチュエイト社を約3億ドルで買収し手に入れました。そのアクチュエイト社が標榜していて現在も引き続き、その製品の特徴となっているのが『100%アダプション』というキーワードです。企業でアプリケーションを利用する100%の人が自らのポジションそれぞれで自らが必要とする情報を正しく、適切なタイミングで取得できるようにするというものです。それを実現するには、あたかもFacebookやYouTube、Googleといったソーシャルなサービスのメタファーを意識したゼロトレーニングで且つインタラクティブなユーザーエクスペリエンスを提供できなければいけないと考え製品に実装しました。シンプルな操作ながらユーザー自らがブラウザでインタラクティブに操作を行いソートやグループ化、集計、グラフ化といった操作を行い、結果を保存し、他のユーザーにシェアすることができます。また、結果はデザインファイルという実行形式として保存し、IT部門の開発者へフィードバックを行うこともできます。このサイクルによって現場の知見を組織に広めるためのループが確立されるのです。実際、ご導入いただいた、日本で有数の化学メーカーさんでは、ごく基本的な60種類程度のレポートからスタートし、使いこむうちに200種類を超えるレポート形式を展開するまでになりました。現場のニーズに応えながら成長していくシステムになったのです。この、組み込み型BIプラットフォームがOpenText™ Information Hubという製品です。今ではOpenTextのほかの様々な製品に組み込まれています。
アクチュエイト社は、米国カリフォルニア州サンマテオに拠点を置く会社で20年以上にわたって当初のWeb帳票サーバー製品から、BIプラットフォームへ変遷し、近年ではデータマイニング分野の製品を開発販売してきました。現在は主に組み込み型BIプラットフォームである OpenText Information Hubと本日、後ほど、皆様にご紹介するOpenText™ Big Data Analyticsの2製品をOpenText™ Analytics製品群として販売しています。日本では、これまで500社以上に導入実績があります。
ビッグデータ分析
2020年までに、ビッグデータ分析はあらゆるところで利用されるようになり年間600億ドル、6.6兆円のコスト削減につながるだろうという識者の意見もあります。今から10年くらい前、話題となった本に日本でも結構売れた「ヤバい経済学」と「その数学が戦略を決める」がありました。膨大なデータを統計にかけて、常識や思い込みにとらわれない隠れた本質に迫るものでした。「ヤバイ経済学」の著者の2人はポッドキャストFreakonomics Radioを続けていて私も英語の勉強がてら時々聴いています。2016年には、彼らのブログをまとめた書籍「ヤバすぎる経済学」が10周年を記念して刊行されました。一方、私も昔夢中になって読んだビート文学のウィリアム・S・バロウズの紹介者として有名な山形浩生(ひろお)氏が翻訳した、「その数学が戦略を決める」では、統計学が大量データを扱えるようになったコンピュータのパワーによって専門家の知見を凌駕することさえ可能になったという実例が紹介されています。たとえば、葡萄がワインになる前からビンテージワインの将来価格を正確に予測することができたり、出会い系サービス大手は回帰分析を使ってうまくいきそうなカップルをマッチングしたり、カジノでは客の居住区の年収、人種、年齢、プレイ内容と勝敗を計算して、長期的にできるだけ多く金を使わせるよう対応する、あこぎな手口だったり、まだ監督も配役も決定していない脚本をニューラルネットにかけてその興行収入を誤差1億円程度で予測する、クレジットカードの使用状況と返済状況から離婚率や自動車の事故率を算出できるとか、かつてネット通販大手は客によって販売価格を変える実験を行っていた、といった例が紹介されています。そして、数年後、2010年代に入って「ビッグデータ」が、ある種のトレンドを示すキーワードとして、一般に広く取り上げられるようになってきました。ビッグデータの分析を行うことがウォルマートのような先端的な企業ではなくとも身近になりITの課題として現実化してきたのです。勘や経験ではなく、データに基づく科学的な分析によって意思決定を行うことの重要性がひろく認識されはじめました。さらに、オープンテキストのBig Data Analyticsのような、手軽なツールによってビッグデータ分析が身近になってきたといえます。
ん?セクシー?はぁ?
2009年、Google社のエコノミストがこういいました。「今後10年で最もセクシーな職業はStatisticianであると主張していきたい。本気で。」職業としてのスタティスティシャン、統計学者ではなく統計家、統計の専門家のことですね。外資系企業では統計分析を行うスタティスティシャンとういうポジションがあります。2014年の統計ですがアメリカでは26000人以上がスタティスティシャンとして働いてるそうです。かれらは、品質管理、技術部に所属しているケースが多いですが、データ解析のプロです。そして、2011年あたりから「データサイエンティスト」という職業の呼び名に関心が高まりだしました。米バブソン大学教授トーマスH.ダベンポート氏が「21世紀で最もセクシーな職業」はデータサイエンティストだと言ったのが2012年です。データサイエンティストに求められるものは、統計学のスキルにプラスしてビッグデータのハンドリング技術、さらにはビジネスの課題と分析の課題を結びつけるスキルが求められます。さて自分がスタティスティシャンでもデータサイエンティストでもないビジネスユーザーの立場として考えるとセクシーなスタティスティシャンやデータサイエンティストたちに、おいしいところを持っていかれたままでいいのでしょうか?ビジネスユーザーがセクシーじゃいけない理由なんてないですよねぇ?
セルフサービス+ビッグデータ
そういった流れをうけて当然、従来のBI(ビジネスインテリジェンス)からアナリティクス、BA(ビジネスアナリティクス)へ、一歩踏み込む流れが来ています。特に世間がAI、AI、AI、AI(おさーるさんだよー♪)言い始める前は特にそうでしたよね?今だって、まだまだとっても大きな課題ですよ。ある調査会社が2015年の時点でこんなプレスリリースを出しています。『2017年までに、ほとんどのビジネスユーザーとアナリストは分析のためのデータが用意されたセルフサービスツールにアクセスできているようになる』、これを書いている時点(2018年)では、もう過ぎてますけど。記事では、もはや、ITの手からビジネスの現場へシフトする時期だといっています。「データの収集」ですら現場に開放すべきとも言っています。多くの専門家が言うように、かつてのBI同様、現在、アナリティクスの世界でもビジネスユーザー、つまり現場の担当者が自ら分析を行うためのセルフサービスが求められています。
アナリティクスのセルフサービス化には2種類あります。「社内の専門家からの自分の手に分析を取り戻すこと」、もうひとつは、「社外の専門家からの自社の手に分析を取り戻すこと」。これは、あるリテール系のお客様から伺った話です。店頭在庫の最適化を行うサービスをコンサルファームにお願いしていて、いわゆる「デスクリプティブアナリティクス」(どうすればいいかといった具体的な処方箋を提供するアナリティクス)だと思いますが、ある商品をいくつどこの店からどこの店へ移動せよといった指示書がアウトプットされます。そのとおりに、お客様が実行するとコストがカットされ確かに効果がある。ただし、ロジックが完全にブラックボックスなのでお客様の自社内にノウハウが蓄積できない、とのことでした。
分析のノウハウというのは、顧客企業自体の重要な能力/資産だと考えられます。その積み上げによって自社のビジネスの重要な部分が形成されていくのではないでしょうか?と私は考えます。
オープンテキストが、ビッグデータビジネスアナリティクスを提供する製品がOpenText Big Data Analyticsです。製品名が、ストレートでなんのひねりも無いBig Data Analyticsです。簡単に言ってしまいますとOpenText Big Data Analyticsは、ビジネスユーザーを予測分析の達人に変身させるビッグデータ分析ソリューションです。データサイエンティストでなくてもすぐにデータ分析を行えるしくみを提供するものです。今、求められているのはこのようなツールではないでしょうか?
オープンテキスト株式会社
ソリューション部
シニアソリューションコンサルタント
落合 辰巳