広島を本拠地とする木造住宅用構造材メーカーとして全国15拠点で事業を展開する中国木材株式会社。これまで複合機の機能を用いてFAXの送受信を行ってきた同社は負荷軽減を目的に、クラウド型の多機能インターネットFAXサービスのOpenText Fax2Mailを導入しました。工場購買部門(以下、購買課)における設備部品の発注から活用をスタート。月間約1,450枚の紙によるFAX送信がなくなり、48時間~72.5時間分の工数削減が実現しています。
複合機とPC-FAXによる独自システムの管理負荷低減
中国木材は住宅の梁や柱などの構造材を中心に、木材の製材、加工、販売を手がけており、業界シェアは25%に達しています。生産過程で生成される木質バイオマスを再エネ蒸気と電力の生産に活用してGHGプロトコルにおけるScope1・2のカーボンネガティブを達成し、余剰エネルギーは地域に還元。木材業の循環型経済に向けて、杉の苗生産、1万haの社有林の管理なども手掛け、CO2排出権の販売も開始しています。
今回、同社が既存のFAXシステムを見直した背景には、管理負荷の増大がありました。各種書類をFAXで送受信するため、独自に複合機経由のPC-FAXと内製システムを組み合わせていましたが、システムメンテナンスの負荷が高かったと情報システム課の川野友之氏は語ります。
「業務部門からはFAXの送り忘れ防止やFAX情報を共有する仕組みが求められていたため、情報システム課で専用システムを内製して対応してきました。しかし、複合機を入れ替えるたびに設定を引き継ぐ作業やPC-FAXドライバのインストールなどが発生します。今後PC-FAXの機能を扱える人材の育成にも不安を感じていたことから、管理負荷を軽減したいと考えました」
情報システム課が、全社の業務部門に対してFAX業務に関する現状調査を実施したところ、購買課では設備部品の発注で毎月1,000枚以上の注文書を紙でFAX送信していることが判明しました。多くの発注業務がEDIやメールなど電子化されている中、取引先の事情やコストの関係からFAXに頼らざるを得ない状況が続いていました。
「購買課では、全社共通グループウェアのHCL Notes/Domino(以下、Domino)で注文書を作成し、紙に印刷してから取引先にFAX送信していました。月に1,000枚以上のFAXを電子化できれば大きなコスト削減となるため、まずは発注書のFAX送信のデジタル化から取り組むことにしました」(川野氏)
DominoとのAPI連携により既存アプリに組み込むだけで導入が可能
システム選定に着手した同社は、2024年に開催されたDominoのコミュニティイベントでOpenText Fax2Mailに着目。採用の決め手は、DominoとのAPI連携でした。送受信両方ともAPI連携できる点が他社のクラウドFAXより優れていたといいます。
「サーバーなどの追加投資は不要で、既存のDominoアプリに組み込むだけで導入でき、新たな運用負荷やコストが発生しない点が重要でした。既存の注文書のワークフローシステムとの連携により、FAXをPDFファイルで送受信することが可能です。Dominoは閲覧の制御、メールとの連携、アドレス帳との連携もしやすく、組み合わせの効果は大きいと考えました。さらにID単位の使用枚数でなく、総枚数での価格体系も魅力でした」(川野氏)
正式採用に先駆けてトライアル環境を構築し、購買課の担当者にOpenText Fax2Mailのデモを実施。インターネットFAXサービスの仕組みを説明し、FAX送信の負担が大きく減る、FAX送信履歴がDomino上で確認できるなどのメリットを理解してもらったうえで2025年3月から7月にかけて開発を実施しました。
「開発時は各拠点の担当者とWeb会議を行い、最適な形を模索していきました。以前の開発では要望を反映してもいざ運用となると使われなくなった機能もあったため、基本機能の試験操作を通じて使用感をつかんでもらったうえで、改めて必要な機能を検討できるよう、アジャイル開発で進めていきました」(川野氏)
OpenTextの担当者には要件定義のフェーズを中心に支援を受け、さまざまな疑問を解消しながら同社の要件に合う形で設計を重ねていきました。
「OpenText Fax2Mailの諸条件を確認しながら、業務側との落としどころを探るのは大変でしたが、OpenTextのサポートを受けて理解を深めながら導入できました。コストを極力かけずに要求機能を実現する方法をアドバイスいただけたことも助かりました」(川野氏)
月に1,000枚以上のFAX送信を電子化
電子帳票システムとの連携で作業効率化
2025 年7月 か らOpenText Fax2Mailの利用を開始した購買課では、部品発注のワークフローの中に電子FAX送信のフローを追加。DominoのFAX送受信用データベースからPDFファイルを添付して送信するだけで、自動的に取引先へFAX送信されます。Dominoに送信と共に保存されるので、従来のFAX送信にかかる手作業が不要となりました。
「手作業によるFAX送信が1件で2~3分かかっていたとして、月に1,450件で計算すると48時間~72.5時間分の工数が削減され、相当額のコスト低減につながります。また、購入機会の損失も回避できます。設備の発注は緊急納品となると割高になるので、買い損ねは避けたいです。注文書データベースへFAX送信を反映させるようにしたことで、発注漏れに気付きやすくする仕組みができました」(川野氏)
送信済みの注文書ファイルはこれまで、FAX送信後に電子帳簿クラウド保存サービスに手動でアップロードしていましたが、FAX送信と同時に専用メールアドレスへ送信する機能も組み込んだことで、手動での登録作業が不要となったことで大きく手間が削減され、現場で好評を博しています。
適用範囲を拡大しFAX回線を使用する全部署へ展開
第1ステップとして、購買課における注文書のFAX送信を電子化した後は、第2ステップとしてFAX受信を行う見積業務との連携に適用範囲を拡大する予定です。さらにその先は、すべての業務部門にOpenText Fax2Mailを展開していくことで複合機へのFAX機能の追加、FAX配線、PC-FAXドライバの設定などが不要になり、システム課の業務負荷が大きく削減される見込みです。
「数年おきに発生する複合機の更新時は、システム課の4~5名がチームを組んで張り付いて対応しなくてはならず、かなりの人的リソースを要していました。事業拠点や複合機の台数が増えていく中、これらの業務負荷がなくなることで別の業務に時間を割くことができるようになると考えています」(川野氏)
OpenText Fax2Mailはシステム課の負荷軽減だけでなく、全社における業務の高度化にも貢献することが期待されています。Dominoによるアドレス帳の共有により、複合機のアドレス帳消失リスクが回避でき、ユーザーの利便性も向上します。DominoからのFAX送受信で、案件別のやり取りも時系列で管理できるようになり、取引先との情報伝達における齟齬もなくなると考えられます。
「FAX受信時に指定したユーザーへメールで伝えたり、別のユーザーへリンクとして転送したりと情報連携も容易になります。今後は複合機のない拠点でもFAXを使えるほか、テレワークなど自宅からでもFAX送信できるようになります。Dominoだけでなく、自社開発で使用しているVBやJavaといった言語でも活用できるといった大きなメリットを体感できました」(川野氏)
今後については、AI-OCRとOpenText Fax2Mailを連携し、取引先から受信した注文書、契約書、納品書、請求書などを自動で読み取ることで入力作業の負担を軽減し、業務の効率化を図っていく予定です。
開発協力:MiscWorkshopsOSAKA(HCL Ambassador 2025 野村知也氏)
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