徹底分析!OT(Operation Technology)セキュリティのよくある課題とSBOMでの解決マニュアル

OTセキュリティにおいて、レガシーシステムの脆弱性…

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1月 22, 20251 min read

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OTセキュリティにおいて、レガシーシステムの脆弱性やサプライチェーンリスク、透明性の欠如は重要な課題です。本記事では、これらの課題に対応するための鍵となるSBOMの役割を以下の構成で詳しく解説します。

  1. OTセキュリティの基本概念
  2. OTセキュリティにおけるよくある課題
  3. SBOMとは何か
  4. SBOMで解決するOTセキュリティの課題
  5. SBOM導入のベストプラクティス
  6. まとめ

SBOMを活用することで、OT環境特有のリスクやセキュリティの脆弱性を解消し、脆弱性管理やリスク軽減に役立つ多角的なアプローチを実践的に習得することができます。OTセキュリティ強化のための実践的な第一歩の一助となれば幸いです。

1. OTセキュリティの基本概念

1.1 OTとITの違い

OT(Operation Technology)とIT(Information Technology)は、共に企業の様々な領域で用いられていますが、その役割と目的においては大きく異なります。 OTは生産プロセスや物理的な装置の管理を目的としており、産業用の制御システムやSCADA(監視制御データ収集システム)などが含まれます。これらのシステムはしばしば化学工場、自動車製造、発電所、水処理施設など、物理的なプロセスを伴う環境で使用されます。

一方で、ITは主としてデータの管理や情報の処理に焦点を当てています。 たとえば、企業の業務プロセスを管理するERPシステムや社内コミュニケーションを円滑にするためのメールサーバーなどです。これにより、ビジネス上の意思決定をサポートし、ビジネスオペレーションを最適化します。両者はこのように役割が明確に異なるため、OT環境ではしばしばITとは異なるセキュリティの取り扱いが必要となります。ただし、近年ではOTとITのコンバージェンス(統合)が進んでおり、双方の技術が相互に影響し合い、新たなセキュリティの課題を提起しています。

1.1.1 OTとITの統合による新たなチャレンジ

OTとITが密接に関わることの利点は、オペレーショナル効率や生産性の向上にあります。しかし一方で、この統合は新たなセキュリティ脆弱性を生む可能性があり、特にOTのリアルタイム性が失われるリスクがあります。過去の例として、2010年に発生したスタクスネット(Stuxnet)攻撃において、産業制御システムを標的とした攻撃が組織に多大な損害を与えた事例があります。

1.2 OTセキュリティの重要性

OTセキュリティの強化は、単に企業だけでなく、国家全体の安全に直結する重要な課題です。インフラの停止は国民生活や経済活動に深刻な影響を与える可能性があり、例えばエネルギー供給や交通システム、水処理施設といった社会の中枢を支えるインフラでは、その重要性が特に顕著です。2015年にはウクライナの電力網がサイバー攻撃により一時的に停止したケースも報告されており、このような事例はOTセキュリティの脆弱性が社会の安定にどれほど重要かを物語っています。

これらのインフラを支えるOTシステムは、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃から保護する必要があります。特にサイバーセキュリティの観点からは、OT環境にITセキュリティの手法を適用した複合的な対策が求められます。これにはリアルタイムでの脅威検知、継続的な監視、アクセス制御の強化、システムの冗長化などが含まれます。各企業はそれぞれの業種やリスクに応じて適切なセキュリティ基準を採用し、最新の技術を駆使してOTセキュリティを維持することが求められます。

2. OTセキュリティにおけるよくある課題

OTセキュリティにおける課題は日々進化しています。これに対処するためには、まずは現状を正しく理解することが重要です。以下に、OTセキュリティでよく見られる問題点を具体的に挙げ、その影響と克服方法について述べます。これらの課題は多岐にわたり、企業の運用に直接影響を与えるため、迅速かつ適切な対応が求められます。

2.1 レガシーシステムの脆弱性

多くの工場やインフラ施設はレガシーシステムを利用しており、これがセキュリティリスクを引き起こしています。これらのシステムは、最新のセキュリティアップデートに対応していないため、攻撃者にとって格好の標的となります。過去の事例として2021年のランサムウェア攻撃では旧システムが原因となったケースがあり、このような事態を避けるためには定期的なシステムの刷新やバーチャルパッチの適用が必要です。

2.2 マルウェア攻撃とランサムウェアの脅威

OT環境は、マルウェアやランサムウェアの攻撃に頻繁にさらされています。日本国内でもランサムウェアによる被害は現実のものとなっており、2023年初頭には複数の企業がランサムウェア攻撃を受けたことが報告されています。このような攻撃は運用停止やデータの損失を招く可能性があるため、ウイルス対策ソフトウェアの導入やネットワーク監視を強化することが欠かせません。

2.3 ネットワークセグメンテーション不足

ネットワークセグメンテーションが適切に行われていないと、一箇所からの侵入で全体が危険にさらされます。特にOTネットワークは、ITよりも物理的な制約が多く、セグメンテーションが不十分であることが多く、ネットワークセグメンテーションの必要性が強調されています。ネットワークセグメンテーションとは、ネットワークを小さなセグメントに分割し、各セグメント間の通信を制御する手法です。不正アクセスや攻撃の拡散を防ぎ、セキュリティ向上、アクセス制御の強化、異常検知の効率化を実現します。

2.4 アクセス制御の不備

多くのOTシステムでは十分なアクセス制御が欠如しています。これは外部からだけでなく、内部からの脅威に対して脆弱にさせる原因です。適切なアクセス制御ポリシーの策定と実装は、従業員の行動をモニタリングし、悪意ある行動の即時検知を可能にします。そのため、ロールベースのアクセス制御(RBAC: Role-Based Access Control)やゼロトラストモデルの採用を検討することが重要です。

2.5 人的要因とリテラシー不足の影響

セキュリティは技術だけの問題ではなく人的要因も大きく影響します。企業におけるリテラシー不足や不適切な操作が重大なリスクを招く可能性があり、セキュリティリテラシー向上のためには、継続的な従業員教育が求められます。情報セキュリティ教育プログラムを取り入れ、従業員一人一人の意識とスキルの向上を図ることが重要です。

3. SBOMとは何か

近年、OTセキュリティの重要性が増す中で、ソフトウェア部品表(SBOM: Software Bill of Materials)が注目されています。SBOMは、ソフトウェア製品の構成要素とその依存関係を一覧化するものであり、セキュリティの透明性を確保し、リスクを軽減する重要な役割を果たします。

3.1 SBOMの定義と目的

SBOMの主な目的は、ソフトウェアの透明性を確保し、セキュリティ上のリスクを軽減することです。具体的には、ソフトウェアのすべてのコンポーネントとその依存関係を明示することで、組織が自社で使用しているソフトウェアのセキュリティを迅速に確認し、脆弱性に対する迅速な対応を可能にします。たとえば、日常的に使用されるOSS(オープンソースソフトウェア)に脆弱性が見つかった場合、SBOMを活用することで影響範囲を特定し、適切なセキュリティパッチを迅速に適用できます。

3.1.1 SBOMの背景と発展

SBOMが注目されるようになった背景には、ソフトウェアサプライチェーン全体の構造的な複雑化が挙げられます。大規模なシステムでは、多数のサードパーティ製品やオープンソースコンポーネントが組み込まれており、それぞれが独自の脆弱性を抱える可能性があります。このため、SBOMによって各コンポーネントの詳細を把握し、継続的なセキュリティの維持を図ることが求められています。

3.2 ソフトウェア部品表の役割

SBOMの中心的な機能は、脆弱性の特定やセキュリティ更新管理の容易化にあります。各コンポーネントの詳細情報、具体的には名前、バージョン、供給元、依存関係などが記載されます。これにより、新たな脆弱性が発見された際の影響範囲の迅速な特定が可能となり、迅速かつ効果的な対応策の立案が可能です。

3.2.1 具体例: OSSの管理

たとえば、企業で使用するオープンソースライブラリに新たな脆弱性が発生した場合、SBOMに基づく対応が重要です。SBOMにリストされている情報を使用することで、迅速に脆弱性の発生場所を特定し、適切なパッチを適用してセキュリティリスクを軽減できます。こうしたプロセスの迅速化は、サイバー攻撃からの事前防衛に不可欠です。

3.3 SBOMとサプライチェーンの関係

SBOMはサプライチェーンのリスク管理にも多大な貢献をします。特に、OTシステムで多くの外部ライブラリやモジュールが使用されているケースでは、自社製品に組み込まれる第三者コードのセキュリティ確認が必須です。SBOMを作成し保持することで、サプライチェーン全体でのセキュリティ情報の可視化と管理を実現し、セキュリティ上のリスクを総合的に軽減することが可能です。

4. SBOMで解決するOTセキュリティの課題

SBOMは、OTセキュリティの複雑な課題を解決するための非常に有力なツールです。OT環境は、生産をはじめとするさまざまな重要なプロセスを支えていますが、これらのシステムはしばしば物理的な設備と密接に結びついており、セキュリティ対策が後手に回ることがあります。SBOMを適切に活用することで、次に挙げるさまざまなセキュリティの課題を効率的に解決することが可能になります。

4.1 脆弱性管理の向上

SBOMは、システムに含まれる全てのソフトウェアコンポーネントをリスト化し、それぞれの脆弱性の特定と管理を容易にします。例えば、SBOMを活用することで、既知のインシデントからの保護だけでなく、NISTが提供するデータベースを参照し、最新の脆弱性情報をキャッチアップできます。これにより、それらのコンポーネントに存在する既知の脆弱性を迅速に発見し、適切なパッチ適用や更新を行うことで、攻撃のリスクを大幅に低減することができます。

4.1.1 ソフトウェアの最新状態の把握

運用担当者がソフトウェアのアップデートを確実に行うことができるよう、SBOMはリアルタイムでの監視を可能にし、迅速な対応を支援します。また、システム全体の健全性を保つためのプラットフォームとしての役割も果たします。

4.2 透明性の確保と効率的な監査

SBOMを使用することで、利用しているソフトウェアの詳細を含む高い透明性を持った履歴の追跡が可能になります。これにより、第三者による監査や内部のセキュリティチェックも効率的に行うことが可能となり、セキュリティ標準に準拠していることを確実に証明することができます。

4.2.1 監査の効率化

SBOMは、監査プロセスにかかる時間とコストの削減に寄与します。従来の手法では数日を要する作業が、SBOMを活用すればより効率的に行えます。

4.3 サプライチェーンリスクの軽減

SBOMは、ソフトウェアのサプライチェーンに関わる全てのプロセスを明確化し、各サプライヤーから供給されるソフトウェアコンポーネントの信頼性とセキュリティを正確に評価することを助けます。重要なサプライチェーン攻撃を未然に防ぐための早期警戒システムとして、オープンなコミュニケーションを促進し、サプライチェーンを介した攻撃のリスクを最小限に抑えることができます。

4.3.1 具体的なリスク評価の手法

企業はSBOMを組み合わせて、CISセキュリティコントロールの導入を増やし、継続的なリスク評価を行うことができます。これにより、サプライヤーとの関係を安全で透明性のあるものに保ちます。

4.4 セキュリティポリシーの強化

SBOMを基にして、より厳密なセキュリティ方針とガイドラインを策定することで、特定の脅威に対する防御を一層強化することが可能です。これにより、個社ごとに異なるニーズに応じたセキュリティのカスタマイズが可能となります。

4.4.1 研修と教育の強化

SBOMの導入は、セキュリティ意識を高めるための社内研修や教育プログラムを強化するにも役立ちます。このような教育は、組織のすべてのメンバーが最新のセキュリティ手法を理解する一助となります。

SBOMを活用すれば、OTセキュリティにおける多くの根本的な課題に効果的に対処することができます。組織の安全性を高めるために、可能な限り早期にSBOMの導入と活用を検討することが重要です。特に、日本国内ではサプライチェーンに対する規制が強まる中、SBOMは信頼性のある選択肢といえるでしょう。

5. SBOM導入のベストプラクティス

5.1 導入のステップとポイント

OTセキュリティの最適化および強化のためにSBOMの導入を行うには、まず、現在稼働しているシステム環境を詳細に把握します。これはSBOMによって管理されるべきソフトウェアコンポーネントを特定するために重要です。その上で、ニーズに最適なSBOM管理ツールを選定します。

次に、選定したツールを使用し、すべてのソフトウェアコンポーネントの詳細を収集し、記録します。その過程においては、企業のセキュリティポリシーを再評価し、強化することで、新しいリスクに備えることが可能になります。

そして、導入の最終段階では、SBOMを基にした監査プロセスを構築します。監査には、PDCA(計画-実行-評価-改善)サイクルを適用することで、セキュリティ対策の継続的改善を促進でき、セキュリティインシデントからの迅速な復旧を可能にします。

5.2 日本国内でのSBOM導入事例

日本国内では、SBOMの導入が進んでおり、多くの企業がその効果を実感しています。日本を代表する製造業の企業は、SBOMを活用してサプライチェーン全体でのリスク軽減に成功し、製品開発における透明性と安全性を高めています。

5.3 ツールの選定

NISTが作成した、Software Supply Chain Security Guidanceによると、推奨される検証ツールは、SAST(Static Application Security Testing:静的解析)、DAST(Dynamic Application Security Testing:動的解析)、SCA(Software Composition Analysis:ソフトウェアコンポジション解析)となっています。

SASTは、ソースコードを使い脆弱性診断を行いますが、利用しているOSS(Open Source Software)を明らかにし、その脆弱性およびライセンスを管理する機能を持つのは、ソフトウェアコンポジション解析ツールです。SASTとソフトウェアコンポジション解析は、脆弱性診断において相互補完的な関係です。

適切なツールを選定する際には、導入のしやすさを選ぶことも不可欠です。ツール選定の過程で、単なる価格比較だけでなく、長期的な運用の持続可能性も考慮に入れることが成功の鍵となります。

6. まとめ

この記事では、OTセキュリティにおけるよくある課題と、それを解決するためにSBOMが果たす役割について詳しく解説しました。OT環境は、レガシーシステムや限られた人材資源が課題として存在し、セキュリティ強化が不可欠です。SBOMを導入することで、サプライチェーンの透明性が向上し、脆弱性管理を効果的に行うことができます。また、SBOMはセキュリティポリシーの強化に寄与し、組織全体の防御力を高めることが可能です。具体的なステップを踏むことでOTセキュリティの向上が期待できます。

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