1. フォレンジックは企業にこそ必要な技術
デジタルフォレンジックというと、警察や捜査機関がサイバー犯罪を捜査するための技術というイメージを持つ人が多いかもしれません。しかし、近年では企業においても、不正行為の調査や情報漏えい対策としてデジタルフォレンジックを活用する動きが広がっています。
本来、フォレンジックとは、インシデントが発生した際に証拠を確保し、将来起こり得る裁判に備えるための技術や手順を指します。このような証拠保全の考え方は、民間企業でも重要なリスクマネジメントの一環として取り入れられており、例えば社内不正が発覚した際の第三者委員会による調査や、外部への説明責任を果たすための資料としても活用されています。
また、英米法圏においては、裁判前の証拠開示手続き(ディスカバリー)や裁判に提出される正式な証拠として認められるための制度(eDiscovery)が整備されており、グローバル企業の間ではこの制度に備える形でフォレンジック技術を導入するケースも増えています。日本企業においても、海外と取引のある企業や上場企業を中心に、コンプライアンス強化や将来的な訴訟リスクのヘッジを目的としてeDiscovery対応を視野に入れたデジタルフォレンジックの導入が進んでいます。
また、最近の傾向として、特にスマートフォンやタブレットなどのモバイルデバイスの普及、リモートワークの拡大、シャドーITの増加により、企業のセキュリティ対策にはモバイルデータの解析が不可欠になっています。
2. デジタルフォレンジックが解決できる企業のセキュリティ課題
デジタルフォレンジックは、セキュリティ担当者が直面する、以下のような課題を解決することができます。
①内部脅威の可視化
従業員や協力会社の関係者による情報漏えいや不正アクセスを検知するのが難しいという課題があります。内部犯行は外部からの攻撃よりも発見が遅れることが多く、早期の発見が難しいとされています。
②データ流出後の原因究明
情報漏えいが発生した際に、どこから漏れたのか、誰が関与していたのかを特定する必要があります。しかし、データが複数のシステムやデバイスを経由している場合、その追跡は非常に困難です。
③コンプライアンス対応の強化
GDPRや個人情報保護法などの規制に対応するため、企業は適切なデータ管理と証拠保全を行わなければなりません。しかし、手作業や非効率的な方法では、これらの要件を満たすことは困難です。
3. 企業で活用できるデジタルフォレンジックの具体例
企業におけるデジタルフォレンジックの活用方法として、まずモバイルデータの解析があります。業務用スマートフォンやタブレットの通話履歴やGPSデータ、アプリのログを分析することで、不正なデータ流出や不審な行動を早期に検出することができます。また、アクセスログの分析を通じて、誰がどのデータにアクセスし、どのデバイスを使用していたのかを追跡することができ、内部脅威を可視化することが可能になります。加えて、インシデントが発生した場合、フォレンジックツールを使用して証拠を適切に保全し、調査を迅速化することで、被害を可視化します。実際には、被害に遭っても何が起こったかすら特定できないケースも多いため、可視化は有用です。
4. OpenTextのフォレンジックソリューションで企業のセキュリティを強化
OpenTextのフォレンジックソリューションは、企業のセキュリティを強化するための強力なツールを提供します。特に、モバイルデータの解析に優れた機能を持ち、スマートフォンやクラウドデータの解析が可能です。これにより、企業は従業員や取引先のデバイスからのデータを一元的に分析し、潜在的なリスクを早期に発見できます。また、データ保全と証拠管理の面でも非常に優れており、証拠が改ざんされることなく、法的要件を満たす形で証拠を保全することができます。
5. まとめ:企業セキュリティにフォレンジックを導入すべき理由
ゼロトラスト時代において、フォレンジック技術は内部脅威対策の重要な要素となります。企業が直面する情報漏えいや不正行為を可視化し、迅速なインシデント対応を実現するためには、デジタルフォレンジックの導入が不可欠です。OpenTextのデジタルフォレンジックソリューションは、企業におけるセキュリティ体制を強化し、データ保全や証拠管理を容易にします。これにより、企業はコンプライアンス対応を確実に行い、内部脅威に迅速かつ効果的に対処できるようになります。
デジタルフォレンジックは、かつては法執行機関での利用が中心でしたが、いまや企業でも十分に活用できる現実的な選択肢となっています。組織のリスク管理やセキュリティ対策を強化するうえで、有力な手段のひとつであることを、ぜひ多くの方に知っていただきたいと思います。