近年、ビジネスにおけるさまざまな場面でDX化が求められています。このことは、購買調達業務においても例外ではありません。むしろ、購買調達業務こそDX化が必要な業務だ、ともいえます。
そこで今回は、購買調達業務におけるDX化とはどういうことか、なぜDX化が必要なのか、DX化を進める際に気を付けるべきポイントなどについて詳しく解説します。
購買調達業務のDX化とは
DX(Digital Transformation)は、デジタルトランスフォーメーションの略称です。従来の紙などによるマニュアル業務をデジタル化し、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ビッグデータなどのデジタル技術を活かし、自社のビジネスをより改善することを意味します。
購買調達業務のDX化は、これらのデジタル技術を活用して購買調達業務のプロセスを効率化し、効果的に改善する取り組みです。
購買調達とは自社の製品・サービスを提供するために、原材料や部品、付属品などを社外のサプライヤーから購入し、その費用を支払う業務を指します。
購買調達業務は、社外とのやり取りが多く、また、仕事のなかでも工数がかかりやすい業務です。そのため、企業における業務のなかでも特にDX化が求められている業務だといえます。
購買調達業務のDX化にかかわるテクノロジーとしては、EDIを使った電子データ取引をはじめ、機械学習や深層学習といったAI技術のほか、データ入力などの事務業務を自動化するRPA(Robotic Process Automation)、さまざまなツールやシステムと連携したAPI(Application Programming Interface)などが挙げられます。
なぜ購買調達業務のDX化が必要なのか
そもそもなぜDX化が必要なのか、購買調達業務にDX化が必要とされる理由や、DX技術を導入するメリットについて詳しく解説します。
業務の効率化
調達業務をDX化するメリットとしてまず挙げられるのは、業務の効率化です。 例えば、メールやFAXなどで行っていた発注業務を自動化すれば作業工数を削減でき、手作業で発生しやすいミス(例:転記ミス)の削減にもつながります。そうして空いたリソースを、取引先との交渉や新規開拓といった業務に注力できるでしょう。
データ化による細かな可視化と分析
調達業務をデータ化すれば、需要と供給の関係性や、業務においてボトルネックになっているところを可視化し、その原因を分析することができるようになります。
データを収集し活用することは、例えば、調達品質の向上に役立つでしょう。なぜなら、納期遵守率や注文充填率などの指標を測ることにより、成績の良くないサプライヤーに改善を促すことも可能になるからです。
属人性排除によるミスの削減
購買調達業務は複雑で多岐にわたるため、どうしても業務に携わる個人の技量に依存してしまいがちです。
例えば、他部門からの依頼内容や発注内容、注文状況や物流ステータスなどを一部の担当者しか把握していない、というのもよくあることです。
しかし、DXを導入すればリアルタイムの情報が蓄積され、誰もが必要な情報を常時検索・利用できる状態になります。
そうすれば、担当者が変更しても情報をもとに業務を進めることができるようになるでしょう。また、ミスの防止にもつながります。
日本における2025年の崖
「2025年の崖」という言葉を聞いたことがある人もいるかもしれません。
2025年の崖とは、日本企業がDXへの取り組みを行なわなかった場合、2025年以降に年間最大12兆円の経済損失を生み、国際競争力を失うことを意味しています。
この言葉は、2018年に経済産業省が公表した「DXレポート」というレポートにおいて指摘されています。
2025年までに日本企業のDX化が進まなかった場合、以下のような問題が起こるとされています。
- 経営者の理解やDX人材が不足してDX化に対する現場の抵抗
- 複雑化・ブラックボックス化したシステムを刷新することに二の足を踏む
- システムの維持コストや技術的負担が増加してセキュリティリスクも増大する
- DXへの取り組みが遅れてデジタル活用が進む世界から取り残される
また、同レポートでは、この問題が解消されなかった場合には最大で年間12兆円の経済損失の恐れがある、としています。
DX化は個々の企業だけでなく、日本全体にとっても重要な課題だといえるでしょう。
購買調達業務をDX化する際の注意点
購買調達業務のDX化を行なう際に注意すべきポイントを解説します。
なぜDX化するか目的を定める
DX化は、それ自体が目的ではありません。
DX化を実現することによって業務の何を、何のために、どのように改善していくのかといった意識を業務に携わる全員が共通認識として持つことが大切です。 そのために必要なのは、明確な目標設定と経営戦略です。それらがなかった場合、DX化とは名ばかりの単純な業務のデジタル化に留まってしまうでしょう。
トラブル発生時の対応を決めておく
新たにDX化を行なうと、今まで起きなかった障壁が発生したり、トラブルが起きる可能性があります。
特に調達業務におけるレガシーシステムからの移行については、取引先とのB2Bデータ連携があるため、社内のみならず社外取引先との調整が必要になってきます。
DX推進を成功させるためには、スピードや柔軟性だけでなく、こうしたデータ統合のリスクのコントロールも重要です。
例えば、購買調達において新規の取引先とのデータ連携は専門のIT知識をもった情報システム担当者が必要になります。
これが国内の取引先なら対応できるベンダーや担当者がいるかもしれませんが、グローバル化において海外の取引先とのデータ連携をする場合、海外独自の仕様や要件または法律に沿った連携が必要になります。
このような場合、自社だけでは対応できない場合が多いので、海外とのデータ連携にも強いベンダーにも協力してもらうなどあらかじめ対策を考えておきましょう。
人材教育をおろそかにしない
長期的に調達業務のDX化を進めるには、対応できる人材の新規雇用や、社内での教育を行なっていくことが大事です。
デジタル技術に対応できる人材が必要なのはもちろん、DX化を導くリーダーも必要になります。
不足している場合には、外部人材の確保や社内の人材育成が必要となるでしょう。また、コア業務以外はアウトソースすることも1つの手段です。
部門の枠を超えて動くことのできる人材を経営陣直轄のチームとして配置するのも一つの方法です。
まとめ
「2025年の崖」問題から見ても、購買調達業務のDX化は急務だといえます。とはいえ、業務全体をDX化するにはどうしても時間がかかります。そのため、できる限り早い段階から着手することが大切です。
また、調達業務のDX化の第一歩はデータのデジタル化です。デジタルデータがなければDX化につなげることはできません。
まずはサプライチェーン業務のデータ化から始めましょう。
そして、データをサプライチェーンの、製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理、配送、販売にいたるまでの一連の流れで活用することが重要です。
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